リンゴ「シナノスイート」の心かび病軽減対策技術


[要約]
リンゴ「シナノスイート」は、予備摘果時期を遅くすると心かび病発生を軽減できる。また、収穫前に着色の進行や地色の黄化が早い早期成熟果を樹上選果することで、心かび病果混入率を低減できる。

[キーワード]シナノスイート、心かび病、予備摘果時期、早期成熟果、樹上選果

[担当]長野果樹試・栽培部
[代表連絡先]電話026-246-2411
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 リンゴ「シナノスイート」は、食味等が優れる中生種として期待されているが、年によって心かび病の発生が多く問題となっている。また、園地によって心かび発生程度が異なっている。そこで、予備摘果時期が心かび病発生と果実品質に及ぼす影響を検討し、心かび病発生軽減方法を見いだす。また、収穫前の着色や地色の黄化が著しく早い早期成熟果には心かび病発生が多い。そこで、収穫前に早期成熟果を樹上で摘除すること(樹上選果)による心かび病果混入低減効果も検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 予備摘果時期を遅らせると心かび病発生率が低くなり、心かび程度の甚だしい果実や腐敗のみられる果実の割合が低くなる(図1)。
2. 予備摘果時期を遅らせると果実肥大が抑制される(表1)。また、予備摘果時期を遅らせて満開42日後に行うと、翌年の頂芽開花率が60%以下となり隔年結果となる危険性がある(図2)。このため、果実肥大や翌年の花芽形成も考慮して、予備摘果時期は満開後3〜4週間頃とする。
3. 心かび病果は、果実重と果形指数(たて径/よこ径)には差がみられないが、健全果に比べて着色がわずかによい(表1)。しかし、収穫期に外観から心かび病果を判断することは難しい。
4. 収穫前2週間頃までに、着色の進行や地色の黄化が早い早期成熟果を樹上選果し除去すると、収穫果への心かび病果の混入率が減少し、とくに心かび程度の甚だしい果実の混入率が低下する。ただし、樹上選果により7%程度の果実を除去することになる(表2)。樹上選果は、収穫前1ヶ月頃の早期成熟果が目立ち始めた頃から開始できるが、収穫前2週間頃以降は早期成熟果の見分けがつきにくくなる。

[成果の活用面・留意点]
1. 樹勢が弱く果実肥大の劣る条件では、予備摘果時期が遅れると果実肥大が抑制されるので早めに予備摘果を行う。
2. 樹勢が強い場合は心かび病発生が多くなる傾向があるので、樹勢を落ち着けることが重要である。
3. 樹上選果では、早期成熟果を採取し、赤道部を切って心かび病発生状況を確認する。採取した果実に心かび病発生が少ないようであれば採取を中断し、必要以上に無病果を取り除かないようにする。このような樹上選果を収穫前に2、3回行う。
4. 樹上選果を行っても、心かび病果の完全な排除は困難である。
5. 着色不良年においては、早期に着色する果実が目立ちにくい場合があるので、地色の黄化に注意して対応する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:リンゴ新品種の栽培技術の策定
予算区分:県単研究(基礎)
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:玉井 浩、小野剛史、臼田 彰

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