ウンシュウミカンのオーキシン活性薬剤処理による発芽抑制効果


[要約]
ウンシュウミカンの夏芽母枝にオーキシン活性を示す各種薬剤の散布処理を行った場合、1−ナフタレン酢酸ナトリウム(以下NAAとする)の200ppm処理で、既に登録されているエチクロゼートの200ppm処理と同等の発芽抑制効果がみられ、薬害の発生も認められない。

[キーワード]ウンシュウミカン、ハウス栽培、オーキシン活性、発芽抑制効果、NAA

[担当]愛知農総試・園芸研究部・常緑果樹グループ
[代表連絡先]電話0533-68-3381
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 ウンシュウミカンの早期加温栽培では、夏枝を結果母枝(以下夏芽母枝とする)として利用するが、夏芽母枝からの再発芽により母枝の充実が阻害され、加温後の着花不揃いの原因になる。現在は発芽抑制剤として、エチクロゼートの100〜200ppmが登録されているが、処理時期等で安定した効果が得られない場合がみられること、連年施用により樹勢低下が懸念されること、発芽抑制の登録薬剤が1剤のみであることなどの理由から他剤の登録拡大が急務である。そこで、オーキシン活性を示す各種薬剤について、発芽抑制効果の検討をする。

[成果の内容・特徴]
1. 夏芽母枝の発芽節率は、1−ナフタレン酢酸ナトリウム200ppm処理によって8週目で1.0%以下で慣行薬剤のエチクロゼート200ppmと同様に発芽抑制効果が高い。一方、無処理の場合は4週間目で、2-メチル-4クロロフェノキシチオ酢酸-S-エチル(以下MCPAチオエチルとする)と2-メチル-4-クロロフェノキシ酢酸エチル(以下MCPBとする)200ppm処理の場合は5週間目で5.0%以上の発芽節率となり、発芽抑制効果は低い(図1)。
2. MCPAチオエチル及びMCPB200ppm処理では、新葉の葉脈にコルク化が見られたが、慣行薬剤のエチクロゼート及びNAA200ppm処理では薬害が認められなかった(表1写真1)。
3. 薬剤処理後10週目に再度切り返しせん定し発芽させた新梢が完全緑化した後の葉面積と葉重をみるとMCPB200ppm処理によって葉が矮小化する傾向がみられるが、他の薬剤の影響はない(表2)。
4. NAA200ppm処理は、エチクロゼート200ppm処理と同等の新梢に対する発芽抑制効果が期待でき、薬害も認められないので、発芽抑制剤として利用できる可能性がある。

[成果の活用面・留意点]
1. 現時点でウンシュウミカンの夏秋梢伸長抑制として登録がされている薬剤はエチクロゼートのみである。
2. MCPBは他の使用目的でウンシュウミカン登録があるが、NAA及びMCPAチオエチルはウンシュウミカンでの登録はない。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:早期加温栽培における着花安定技術の確立
予算区分:単県
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:杉原巧祐

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