ニホンナシ「新生(しんせい)」と「秋麗(しゅうれい)」の受粉樹としての利用方法


[要約]
開花期が主要品種に比べて早く、花粉も多い「新生」は当年の受粉用に適しており、えき花芽が多く開花期が遅い「秋麗」は翌年の貯蔵花粉用として適している。両品種を受粉樹として利用することで開花期前後の労力競合を軽減できる。

[キーワード]ニホンナシ、新生、秋麗、受粉樹、花粉、労力分散

[担当]新潟農総研・園研セ・育種科、栽培施設科
[代表連絡先]電話0254-23-0574
[区分]関東東海北陸農業・果樹
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 現在のニホンナシ主要品種は自家不和合性であるため、結実確保のための人工受粉とそれに用いる花粉採取は重要な作業である。花粉採取用の受粉樹は「新興」、「二十世紀」、「長十郎」等が用いられているが、開花期が比較的集中し労力競合や天候の影響を受けやすいことが問題となる。そこで、既存品種の中から花粉採取用に適する品種を選定し、その利用方法を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 「新生」は主要品種に比べて開花期が非常に早く、花粉の量も多いので花粉採取用専用品種として適している(図1)。「新生」の利用により、主要品種の人工受粉作業開始までに花粉の準備を終えることができる(図4)。
2. 「秋麗」は開花期が主要品種の中で最も遅いが、えき花芽着生が多く、「二十世紀」並の1花当たり花粉量があるので、花粉採取用として適している(図1)。
3. 開花期が遅い「秋麗」は、開花始期頃に花芽が着生した枝を枝切り、または花そうを採取し、5℃の冷蔵庫で10日程度冷蔵後に花粉採取することで翌年用冷凍花粉として使用できる。このように利用することで、一連の受粉作業が終了した後に翌年の花粉採取が行えるので、作業労力の分散が図られる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「新生」「秋麗」の自家不和合性遺伝子型はS3S4であり、主要品種では「あきづき」「筑水」と交雑不和合を示すので、それらの品種への受粉用としては他の品種を用いる必要がある。
2. 「新生」は昭和24年に新潟県農事試験場園芸部で育成発表した品種だが、果実品質は不良であり生食用としては利用されていない。また、登録品種ではなく、種苗生産や譲渡に制限はない。
3. 「秋麗」は果実品質が優れているため、生食受粉兼用品種としての利用が可能であるが、花粉採取に利用すると樹勢の衰弱による小玉化等の果実品質の低下を招く恐れがあるので、着果管理を徹底する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:消費者ニーズに対応した園芸の高品質・作期拡大技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:松本辰也、山澤康秀、本永尚彦、榎並晃

目次へ戻る