花弁の遅延蛍光によるバラ切花の鮮度・日持ちの測定


[要約]
バラの花弁に光を当て、直後に発する蛍光(遅延蛍光積算値)は、開花ステージの進展とともに低くなる。遅延蛍光を計測することで、鮮度・日持ちを測定できる可能性がある。

[キーワード]遅延蛍光、バラ、鮮度、日持ち

[担当]静岡農試・園芸部
[代表連絡先]電話0538-36-1555
[区分]関東東海北陸農業・花き
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 切花の鮮度や日持ちは、重要な品質であるが、非破壊で日持ちを瞬時に測定できる技術はない。出荷時や店頭で鮮度や日持ちを測定できれば、消費者の選択肢が増え、需要拡大につながる。ここでは、花弁の遅延蛍光値を用いて、鮮度や日持ちを計測する技術を開発することを目的とした。

[成果の内容・特徴]
1. 花弁の遅延蛍光値は、遅延蛍光測定装置のクランプ部に測定花弁をはさんで測定するため、非破壊で測定できる(図1
2. 光の照射によって、花弁中(主に葉緑体)に存在する分子中の電子が励起され、高エネルギーの状態となる。励起された電子が、高いエネルギーの状態から一定の時間後に基底状態に復帰するときに、放出されたエネルギーレベルに応じた波長のフォトン(光子)を発生する。このフォトンを測定したのが遅延蛍光値である。具体的には、花弁に一定量の光(半導体レーザーによる680nm、10mW/cm2)を10秒間照射し、直後に暗黒条件にして光量子数を測定することで、花弁の遅延蛍光が測定できる(図2)。ここではバックグラウンド値を減じた初期遅延蛍光の積算値(照射終了直後の5秒間の光量子数)を用いる。
3. 花弁の遅延蛍光は、外花弁が最も高く、花弁の内側の遅延蛍光値は低い。採花後25℃で1日経過すると、外花弁の遅延蛍光値は大きく減少する(図3)。内側の花弁の遅延蛍光値は低いが、どの部位の花弁でも日数とともに遅延蛍光値は低下する。
4. 25℃一定条件下における花弁の遅延蛍光値は、開花ステージの進展、及びベントネックの発生に伴い低下する。
5. 県内外の生産者から入手したバラ「ローテローゼ」の、日持ち試験開始時の花弁の遅延蛍光値と、日持ち日数とは、各生産者の平均値では相関が高く(r=0.89)、花弁の遅延蛍光値を計測することで、鮮度や日持ちを測定できる可能性がある(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. ローテローゼを用いた場合の計測である。
2. 個々の切花の遅延蛍光値と日持ち日数との相関係数はr=0.56と低いため、個別の切花の日持ち予測の精度は低い。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:バラ切花の日持ち性判別に関する基礎的技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年
研究担当者:佐藤展之、牧野孝宏、土屋広司(浜松ホトニクス)
発表論文等:特許出願番号 2003-94439

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