10月上旬以降のイチゴ連続収穫を可能にする本圃短日ウォーター夜冷処理法


[要約]
8月中旬から9月中旬の本圃短日ウォーター夜冷処理により、夜冷育苗栽培イチゴの1次腋花房が連続的に分化し、10月上旬から連続的な収穫が可能となる。本処理は頂花房の着花数が減少するが、育苗中の窒素施用量を増加し苗の充実を図れば着花数が増加する。

[キーワード]イチゴ、花芽分化促進、夜冷育苗、ウォーターカーテン

[担当]栃木農試・栃木分場・いちご研究室
[連絡先]電話0282-27-2711
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 いちごの促成栽培では、高単価取り引きされる10月上旬から収穫することは夜冷育苗等による花芽分化促進処理により可能であるが、高温長日期の定植となるため1次腋花房が分化せず、収穫の中休み期間が生じてしまう。そこで、定植後の本圃におけるウォーターカーテンを利用した短日夜冷処理(以下、本圃短日ウォーター夜冷処理)が、1次腋花房の花芽分化と収量に及ぼす影響を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 地下水(水温17℃)の散水によって夜間のハウス内温度を18〜20℃程度まで下げることができる(図1)。
2. 夜冷庫を用いた「とちおとめ」の花芽分化促進処理により頂花房を分化させた苗を本圃に定植し、その後約1ヶ月間(8月中旬〜9月中旬)本圃で短日ウォーター夜冷処理を行うことで、1次腋花房を連続的に分化させることができ、頂花房を10月上旬から収穫開始しても1次腋花房が連続的に出蕾開花する(表1)。
3. 本圃短日ウォーター夜冷処理中の日長時間は、8時間日長が最適である。12時間日長では処理効果が低下し、16時間日長では効果が見られない(表1)。
4. 本作型では、頂花房の着花数が慣行の夜冷早出し作型(11月上旬収穫開始)に比べ減少する。そのため、育苗時の株当たり窒素施用量を慣行の70mgから210mgに増やすことで着花数がやや増加し、開花及び収穫時期がやや早まる(表2)。
5. 平成16年度試験では、12月末までの年内収量が夜冷早出し作型の81〜89%の増収となった。また、育苗時の窒素施用量210mg区は、70mg区に比べ年内収量で4.5%、頂花房収量では15.4%の増収となった(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 冷房効果を高めるため十分な散水量(120リットル/分/a)を確保し、1次腋花房分化まで処理を継続する。
2. 本作型は、初期にアザミウマやハスモンヨトウ等の害虫被害が発生しやすいので、防除を徹底する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:イチゴの高品質多収生産技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2003〜2004年度
研究担当者:家中達広、稲葉幸雄

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