無加温半促成ナス栽培における虫媒授粉による安定着果のための保温管理法


[要約]
無加温半促成ナス栽培において、虫媒授粉による着果安定のためには開花前の平均夜温が16〜20時に20℃、20〜24時に15℃以上が必要である。トンネル被覆の保温期間を延長し、水封マルチとの併用で、夜温は高く推移し、着果は8日程度早期に安定する。

[キーワード]ナス、授粉、着果、夜温、保温、水封マルチ

[担当]群馬農技セ・生産技術部・野菜グループ
[連絡先]電話0270-30-7799
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 トンネル被覆による無加温半促成ナス栽培の着果方法は、低温期は着果不良を補うため、ホルモン剤の単花処理を行い、4月中旬以降に訪花昆虫による授粉に切り替えられている。現地では、省力のために1日でも早期の訪花昆虫の導入が望まれている。そこで、安定着果を図るとともに、訪花昆虫の導入時期を前進させ、ホルモン剤の処理作業の早期・省力化を図るため、着果に必要な温度条件を把握し、適切な保温条件を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 品種「式部」での授粉による着果率は開花前7日間の夜温(16時〜24時の気温)の平均との間に有意な回帰式が得られ、着果率95%以上を得るための16〜20時の平均気温は19.3℃、かつ20〜24時の平均気温は14.2℃以上と推定される(表1)。
2. 4月1日以降無保温に比べ、トンネル被覆による保温期間の延長で、16時〜20時の平均気温は0〜4℃、20時〜24時は0〜6℃高くなる。また、トンネル被覆に水封マルチを設置することで、16時〜20時の平均気温は0〜6℃、20〜24時は0〜9℃高く推移する(図1)。
3. 4月1日以降無保温での授粉による着果安定は4月11日以降であるが、トンネル被覆の保温期間の延長では、4月6日に着果率が100%、水封マルチの利用では4月3日に100%となり、訪花昆虫の導入時期がそれぞれ、5日および8日早まる(図2)。
4. 4月1日以降無保温では、授粉による着果での初期収量のA品率は低くなるが、トンネル被覆による保温期間の延長で、ホルモン剤の併用と同等に得られる。また、水封マルチとの併用で、着果方法に関わらず、初期のA品率が高くなる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 4月1日以降保温をしない場合、授粉による着果に必要な気温の確保が遅れるため、訪花昆虫を導入しても、ホルモン剤の単花処理を行わなければならない。
2. 授粉による着果に必要な気温の確保を早めるためには、降霜の少ない4月に入ってからも保温をやめず、期間を延長して保温する。なお、着果に必要と推定された16時〜20時、20時〜24時の温度条件は概ね同時期に得られる。
3. 水封マルチには透明ポリダクトを利用することで、導入経費は12,000円/10aとなる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:ミツバチを利用した半促成ナスの着果促進技術体系の開発
予算区分 :高度化事業
研究期間 :2004〜2006年度
研究担当者:宮本雅章、阿部晴夫、剣持伊佐男

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