日射量がサラダナ・チンゲンサイの硝酸イオン濃度へ及ぼす影響


[要約]
秋作の施設栽培において、サラダナでは生育期間中の1日あたりの日射量が2.0MJ/m2以上では、植物体内の硝酸イオン濃度へ及ぼす影響は小さいのに対して、チンゲンサイでは、1日あたりの日射量が少ないと硝酸イオン濃度が高くなる。

[キーワード]サラダナ、チンゲンサイ、硝酸塩、日射量

[担当]静岡農試・園芸部
[連絡先]電話0538-36-1555
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 サラダナ、チンゲンサイ等の連作産地では、土壌への硝酸態窒素の蓄積と作物体への過剰吸収が懸念されている。葉菜類等で、光と植物体内の硝酸イオン濃度との関係が報告されているが、ここでは、生育期間中の日射量を遮光率の異なる寒冷紗を利用して遮光することによって積算値を制限することにより、生育期間中の日照不足がサラダナ・チンゲンサイの植物体内における硝酸イオン濃度に及ぼす影響を解明する。

[成果の内容・特徴]
1. 秋作のサラダナ(施設栽培)では生育期間中の日射量の積算値が少なくなるほど、収穫時の株重(生体重)は減少する傾向はみられるが、1日あたりの日射量が2.5〜6.5MJ/m2の範囲では、硝酸イオン濃度の差異が小さい(図1)。
2. 秋作のチンゲンサイ(施設栽培)では生育期間中の日射量の積算値が少なくなるほど、収穫時の株重(生体重)は減少するが、葉身、葉柄中の硝酸イオン濃度は高くなる傾向が見られる(図2)。とくに、1日あたりの日射量が4.0MJ/m2以下では、全株重の減少が激しく、硝酸イオン濃度が増加する。
3. 秋作のチンゲンサイでは、収穫時の硝酸イオン濃度を低減するためには生育期間中の日射の不足を防ぐことが重要であるのに対して、サラダナでは2.0MJ/m2以上では日射量の増減によって、作物体内の硝酸イオン濃度は影響を受けにくいと推定される。

[成果の活用面・留意点]
1. 秋から冬にかけて、チンゲンサイを栽培しているハウスでビニールの汚れ等による日射の透過率の低下が懸念される場合に、早めに被覆資材を取り替えて、できるだけ光を多く取り入れることにより硝酸イオン濃度の上昇を抑えることができる。
2. 長期間の連作が行われているハウスにおいて、チンゲンサイの植物体内の硝酸イオン濃度を低下させるためには、光条件を改善するとともに、さらに、減肥によって窒素成分の過剰吸収を防止したり、栽培中の温度管理等にも留意したりすることも重要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:光・温度等環境影響の解明に基づいたリアルタイム診断によるチンゲンサイ、サラダナ等の硝酸濃度低減化
予算区分:国補
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:大須賀隆司、大石直記、高橋和彦、松本昌直、大場聖司

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