有機栽培のためのイチゴ「サンチーゴ」に適した育苗時の施肥技術


[要約]
「サンチーゴ」の有機栽培では、樹皮廃棄物を発酵させたバークとパーライトの混合培地を用い、育苗時に有機質肥料(6-6-4)を慣行の1/4に減肥することにより、12月上旬から頂果房を収穫でき、5t/10a以上の可販収量が得られる。

[キーワード]有機栽培、「サンチーゴ」、イチゴ、発酵バーク、有機質肥料

[担当]三重科技セ・農業研究部・園芸グループ
[連絡先]電話0598-42-6358
[区分]関東東海北陸農業・野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 有機栽培は消費者からの要望が強いものの、JASで認証された資材以外の化学肥料や化学合成薬剤の使用は認められない。三重県のイチゴ栽培では、育苗用に市販されている培地には化学肥料が含まれているため、そのままでは有機栽培には利用できなかった。そこで、「サンチーゴ」を有機栽培するために適合する有機培地と有機質肥料による育苗技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 有機栽培用育苗培地は、発酵バークとパーライトを混合したものを使用する。発酵バークは三重県内木材加工場から出た樹皮廃棄物(杉95%、檜5%)を2回裁断後、発酵菌(VS菌)、米ぬか、乾燥鶏糞等の複合資材を混合して一時発酵を行い、6ヶ月間毎月2回切り返して製造する。
2. 発酵バークを含む有機栽培用育苗培地は、培地重量が軽く、育苗時の苗は慣行区に比べやや小型になるが、慣行培地同等の時期に頂果房の花芽が分化し、イチゴ用の培地として利用できる(表1)。また、定植時の作業性や培地の物理性の改善のために、パーライト(粒径0.7〜3.5mm、平均粒径1.6mm)を同量混合する(データ略)。
3. 「サンチーゴ」を用い、育苗時の基肥として慣行の錠剤肥料(N:P2O5:K2O=6-25-3)を慣行量(N:120mg)施用すると頂果房の収穫開始期は12月下旬となるが、有機質肥料(6-6-4)を慣行量の1/4に減肥(N:30mg/鉢)すると、12月上旬から頂果房を収穫することができる(表2)。
4. 育苗時の基肥において有機質肥料を慣行量の1/4に減肥することにより5t以上の可販果収量が得られる(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「サンチーゴ」は育苗期の窒素中断時期が遅くなると、花芽分化が遅れるため、有機質肥料を用い、8月初旬から窒素中断を行う。
2. 「サンチーゴ」は炭疽病抵抗性品種であるが、萎黄病抵抗性は無いため、萎黄病防除対策(本圃の太陽熱消毒等)を実施する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:資源循環型農業技術の確立と環境修復に関する研究
予算区分 :県単
研究期間 :2001〜2004年度
研究担当者:田中一久、出岡裕哉、福本浩士

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