静岡県におけるチャ寄生クワシロカイガラムシの薬剤感受性の低下


[要約]
静岡県内にはDMTP乳剤に対する薬剤感受性が低下した個体群が認められる。ブプロフェジン水和剤に対する薬剤感受性は総じて低いが、フェンピロキシメート・ブプロフェジン混合剤に対する薬剤感受性は高く、感受性の低下は認められない。

[キーワード]チャ、クワシロカイガラムシ、DMTP、ブプロフェジン、薬剤感受性

[担当]静岡茶試・病害虫研究
[連絡先]電話0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 静岡県内のチャ寄生クワシロカイガラムシに対しては、DMTP乳剤とブプロフェジン水和剤が長期にわたって使用されている。しかし、近年、これらの2剤の効果低減が指摘されるようになったため、牧之原地区の数個体群についてDMTP剤とブプロフェジン剤、フェンピロキシメート・ブプロフェジン剤を供試して薬剤検定を行い、薬剤感受性の実態を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. DMTP乳剤1,000倍における幼虫の死虫率は、宮崎県個体群が99.7%であったのに対して、静岡県個体群では44.0%〜93.2%である(表1)。
2. 静岡県個体群のDMTP乳剤に対する抵抗性比(R/S比)は、宮崎県個体群を感受性系統とした場合、3.0〜27.5となり、感受性の低下が認められる(表2)。
3. ブプロフェジン水和剤1,000倍における幼虫の死虫率は、宮崎県個体群が93.0%であるのに対して、静岡県個体群では13.4%〜24.2%であり、静岡県個体群の感受性は大きく低下している(表1)。
4. フェンピロキシメート・ブプロフェジン混合剤1,000倍における幼虫の死虫率は、宮崎県個体群が100%であるのに対して、静岡県個体群では96.7%〜99.6%であり、感受性の低下は認められない(表1)。
5. フェンピロキシメート水和剤1,000倍における幼虫の死虫率は、98%以上と高く(表1)、フェンピロキシメート・ブプロフェジン混合剤の殺虫活性はフェンピロキシメートに依存している。

[成果の活用面・留意点]
1. DMTP乳剤の防除効果の低減が疑われるほ場では、感受性が低下している可能性が高いので本剤の使用を控え、フェンピロキシメート・ブプロフェジン剤などの他剤に切り替える。
2. フェンピロキシメート・ブプロフェジン剤についても連続使用は避け、感受性の低下を防ぐ。
3. 有機リン剤や合成ピレスロイド剤など非選択性殺虫剤の使用はできるだけ控えて、チビトビコバチなどの土着天敵の保護に努め、薬剤に過度に依存しないようにする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:茶害虫クワシロカイガラムシの環境保全型防除技術の実用化
予算区分:国補
研究期間:2002〜2003年度
研究担当者:小澤朗人

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