交信攪乱剤を組み込んだ減農薬防除によるクワシロカイガラムシの密度抑制


[要約]
ハマキガ類の交信攪乱剤・トートリルア剤を組み込んだ減農薬防除体系下では、茶園に生息する土着天敵の活動が活発化し、クワシロカイガラムシの密度は抑制される。

[キーワード]チャ、クワシロカイガラムシ、ハマキ、交信攪乱剤、天敵、寄生蜂

[担当]静岡茶試・病害虫研究
[連絡先]電話0548-27-2311
[区分]関東東海北陸農業・茶業
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 茶園には、チビトビコバチなどのクワシロカイガラムシの土着天敵が生息している。こうした天敵の活動は、農薬の影響を受けやすい。そこで、ハマキガ類の交信攪乱剤であるトートリルア剤を導入して殺虫剤の散布回数を削減した減農薬防除体系により、クワシロカイガラムシの天敵の活動を活発化させ、クワシロカイガラムシの密度抑制を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 牧之原市布引原地区の現地茶園約13haにおいて、3年間にわたって交信攪乱剤を設置した結果、チャノコカクモンハマキの密度は全世代を通じて概ね慣行防除区と同等かそれ以下で推移するが(表1)、チャハマキでは第3世代幼虫の密度が慣行防除区よりやや高くなる(データ省略)。また、交信攪乱剤による交尾阻害効果は、8月の第2世代成虫期に低下する場合と、9月の第3世代成虫期に低下する場合がある(データ省略)。
2. クワシロカイガラムシに対する寄生蜂類の寄生率は、交信攪乱区で世代を経るごとに徐々に上昇して最大で80%以上に達する。一方、慣行防除区では、低い寄生率で推移し、明瞭な上昇傾向はみられない(図1)。なお、チビトビコバチが優占天敵種である。
3. 交信攪乱区におけるクワシロカイガラムシの密度は慣行防除区より低く、低密度で推移する(表2)。
4. 殺虫剤の散布回数は、交信攪乱区では慣行防除区の3/4〜2/3程度であり、室内試験データに基づく散布薬剤のチビトビコバチに対する影響程度は慣行区より低い(表3)。
5. 交信攪乱区では、殺虫剤の天敵に対する影響が軽減された結果、チビトビコバチなどの土着天敵の活動が活発化してクワシロカイガラムシの密度を抑制すると考えられる。

[成果の活用面・留意点]
1. 交信攪乱剤の設置は、大面積でまとまって実施する必要がある。
2. トートリルア剤のよるハマキガの密度抑制効果が十分でなく、被害が予想される場合には、天敵に影響の少ない殺虫剤を追加散布する必要がある。
3. 土着天敵の保護によるクワシロカイガラムシ密度の抑制には、やや時間がかかることを認識しておく。
4. 殺虫剤の散布回数を削減することにより、チャノミドリヒメヨコバイなどの密度が高まることがあるので、他害虫の発生状況に注意する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:茶害虫クワシロカイガラムシの環境保全型防除技術の実用化
予算区分:国委(生物機能)
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:小澤朗人

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