「つまようじ」で採取したRNAによるキクのウイルス、ウイロイド病の診断


[要約]
キク葉を突き刺した「つまようじ」の先端部を反応液に浸し、RT-PCRやRT-LAMP反応を行うことにより、迅速・低コストでTSWV、CVB、CSVd、CChMVdが検出できる。

[キーワード]つまようじ、キク、ウイルス、ウイロイド、RT-PCR、RT-LAMP

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・生物工学グループ
[連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・生物工学
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 キクのウイルス、ウイロイド病を高精度に診断する方法としてRT-PCRやRT-LAMP法が普及しているが、遺伝子診断の鋳型とするRNAの抽出には多大な労力と費用がかかる。多数の検体を迅速に診断するために、簡便で安価なRNAの抽出法が求められている。そこで、コロニーダイレクトPCRで使用されているつまようじを用いてウイルス、ウイロイドRNAを採取し、鋳型として用いることを検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 本診断法の最大の特徴は、RT-PCRやRT-LAMP反応に用いるRNAの抽出法にある。キク葉をつまようじで20回程度突き、汁液の付着したつまようじの先端部を反応液に数秒間浸し、遊離したウイルスやウイロイドのRNAを鋳型として用いる(以下、つまようじ法とする)。RT-PCRやRT-LAMP反応は定法により行う。
2. CSVdを保毒し、わい化症状を呈しているキク葉を供試して、つまようじ法に従いRT-PCRを行うと、定法のスピンカラム抽出法やTris-HCl抽出法で精製したRNAを用いた場合と同程度の感度でCSVdを検出でき(図1)、RT-LAMP反応でも同様にCSVdが検出できる(図2)。
3. CVBあるいは近年我が国で分布が報告されたウイロイドのCChMVdは、つまようじ法に従いRT-PCRやRT-LAMP反応で検出できる。
4. 検出が困難なTSWVについてつまようじ法に従いRT-PCRを行うと、保毒無病徴葉からの検出は困難であるが、病徴発現葉からはイムノキャプチャー抽出法やTris-HCl抽出法で精製したRNAを用いた場合と同様に検出できる(図3)。
5. TSWV保毒無病徴葉については、つまようじ法に従いRT-PCRを行い、さらにその増幅産物を鋳型としてLAMP反応を行うことで検出できる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 病徴の発現に対応すべく迅速な診断が要求される場合の確定診断には、つまようじ法の利用は特に有効である。
2. つまようじ法は、つまようじで葉を突き刺すだけの簡便な方法であり、特に多数の検体を扱う場面で有用性が高い。
3. 従来法と比較してつまようじ法は操作が簡便かつ容易であるため、供試サンプル間のコンタミネーションの危険性が低くなる。
4. つまようじで過度に葉を突き、組織片がつまようじの先端に付着し反応液に混入すると、RT-PCR、RT-LAMP反応が阻害される。
5. 病徴発現葉でのTSWVの分布は不均一なため、TSWVの検出については病徴部分とその周辺近傍緑葉部分あるいは葉柄に限りつまようじ法の適用が可能である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題:超微小未分化分裂組織の新規培養法によるキク無病苗生産の体系化
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:大石一史、福田至朗、大矢俊夫

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