小胞子培養によるハクサイと在来カブ交雑系統からの多様な固定系統作出


[要約]
ハクサイ系統と在来カブの交雑系統を用いて小胞子培養を行うと在来カブの形質が導入された多様な固定系統が作出できる。

[キーワード]在来カブ、ハクサイ、小胞子培養、育種、F1

[担当]三重科技セ・農業研究部・経営植物工学グループ
[連絡先]電話0598-42-6356
[区分]関東東海北陸農業・生物工学
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 三重県ではヒノナとハクサイの交雑後代にハクサイを戻し交雑した系統から優良な系統を選抜して地域特産物の育成を図っており、選抜系統に新たな形質を導入するため地域遺伝資源を活用する。選抜系統と在来カブである松阪赤菜との交雑個体を小胞子培養することにより、在来カブの多様な特性を導入した固定系統を早期に作出し、これらを活用したF1育種を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 供試系統A、Bはヒノナとハクサイを交雑したのちにハクサイの戻し交雑を2回行い、さらに在来カブと交雑して得られた系統である。この系統を用いた小胞子培養を表1の方法で行う。洗浄培地での低温前処理は7日にし、改変1/2N&N培地にbenzylamino- purine(BAP)を添加することによって胚様体の形成率を高めることができる(表1)。
2. 誘導した胚様体は胚様体生育培地(1/2MS、ショ糖1%、ジェランガム0.5%、pH5.8)に移植する。再分化個体を植物体生育培地(1/2MS、ショ糖1%、寒天0.8%、pH5.8)に移植して成長させた後、順化、鉢上げを行う。供試系統の植物体再分化率は30〜40%である(データ省略)。
3. 小胞子培養により供試系統から作出された植物体のうち約50〜80%が自然倍加する。これらは蕾受粉を行い種子を得ることができる(表2)。
4. 本法によって長、中、丸型の葉形や緑、紫、濃紫などの葉色等、様々な形質を持った系統を作出することができる(表3)。
5. 作出した系統を親品種にして他の系統と交雑させることによって表4に示すような新しい形質を持ったF1個体を作出できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 本研究法を用いることにより、在来カブから形質を導入した系統を作出することができる。
2. 本研究法は小胞子培養を用いるため、遺伝的に固定した系統が得られる。
3. 本研究法で作出した系統はF1育種のための親品種として利用できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:地域遺伝資源を活用した新野菜の育種による高機能性特産物の開発
予算区分:競争的研究資金(高度化事業)
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:山本有子、橋爪不二夫、森 利樹、北村八祥

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