市販ELISAキット利用による迅速かつ高感度な残留農薬分析


[要約]
ホウレンソウ、ネギ、ニンジンの残留農薬を市販ELISAキットで分析した。イミダクロプリド、フェニトロチオン、クロルフェナピル、及びクロロタロニルの各キットは、実用上十分な測定感度と操作性を有することが確認され、生産現場での出荷前残留農薬検査に適用できる。

[キーワード]野菜、葉茎菜、根菜、イムノアッセイ、残留農薬

[担当]埼玉農総研・農産物安全性担当
[連絡先]電話0480-21-2091
[区分]関東東海北陸農業・流通加工
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 農作物の安全・安心確保の取り組みとして生産履歴の管理・公開が重要視されている。特に残留農薬への消費者の関心は高く、生産現場において迅速かつ簡便な分析法が求められている。迅速かつ簡便な手法としてELISA法は注目されるが、農作物分析への適用性検討は不十分である。そこで、市販ELISAキット4種類をホウレンソウ、ネギ、ダイコン、ニンジンに適用し、作物中成分の測定値に及ぼす影響程度、影響のある場合にはその回避方法及び定量範囲の検証を行い、生産現場への適用を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 4種類の市販ELISAキットを図1のような操作手順で使用し、表1に示した作物種類について作物試料の有無による測定値に及ぼす影響及び、機器分析との相関性(図2)を検討した。ホウレンソウのイミダクロプリド測定以外は高精度の測定が可能である。
2. イミダクロプリドキットを使用したホウレンソウの残留農薬分析の場合、残留値が高く測定される(図3)。これは、ホウレンソウから作成したろ液の希釈を高めることによって測定値は農薬添加濃度に近づくので、ホウレンソウ中成分の影響によると推察される。抗原抗体反応に影響を及ぼしていると懸念されるその物質は、限外ろ過膜の利用により除去することができる(図3)。
3. ニンジン、ダイコンのイミダクロプリド測定において、キットの設定感度のため、図1の操作手順のままでは残留基準値未満を測定できない。メタノールでの振とう抽出時に試料重量を増し、精製水でのろ液の希釈を少なくすることで測定範囲を広げることができる(図4)。
4. 今回検討した作物、ELISAキットについての測定範囲は今回求めた回避方法によるものを含めると表1のようになり、生産現場で残留基準値を確認するに十分な測定感度と操作性をを有する。

[成果の活用面・留意点]
1. 市販ELISAキットで残留農薬の迅速簡便かつ高精度な分析が可能なため、生産現場での出荷物検査に適している。
2. ELISAキット種類は増えつつあるが、すべての農薬には対応できていない。今後開発されたキットについても作物毎に検証が必要である。


[具体的データ]




[その他]
研究課題名:残留農薬評価のための地域特産作物の分類法及び迅速検出法の開発
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:小林由美、成田伊都美、佐藤賢一、中村幸二

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