サツマイモ蒸切干の中白障害発生に関わる塊根のでん粉及び水分含量


[要約]
サツマイモ蒸切干塊根片の一部分が白色不透明になり硬化する中白障害の原因は、でん粉の蓄積不足、ならびにでん粉の糊化不良である。「タマユタカ」では土壌の乾燥に伴う塊根水分の低下によるでん粉糊化不良が本障害の発生に深く関わっている。

[キーワード]サツマイモ、蒸切干、中白障害、タマユタカ、水分、でん粉含量、でん粉糊化

[担当]農研機構・作物研・畑作物研究部・畑作物品質制御研究室、甘しょ育種研究室
[連絡先]電話029-838-7849
[区分]関東東海北陸農業・流通加工、食品
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 蒸切干イモの主産地の一つである茨城県では、原料用品種「タマユタカ」の栽培が盛んであるが、近年増大する安価な外国産輸入品に対抗するうえで加工品質の安定や向上が急務となっている。夏の気温が高く、降水量が少ない年に発生しやすい中白(「シロタ」などとも呼ばれる)は、蒸切干塊根片に白色不透明な硬い部分が生じる障害で、商品性喪失の主な原因となるため、その発生機構の解明と防止技術の開発が望まれている。そこで、品種や栽培条件の異なる塊根における障害発生を調査し、中白障害の発生要因を解明する。

[成果の内容・特徴]
1. 中白障害の発生は蒸煮直後の塊根組織に生じる白変によりこれを予測できる。この部分では細胞内外に空隙が多く、MRI(磁気共鳴イメージング)解析により水分含量の低下が認められる(図1)。
2. 塊根組織の中白発生部分では、でん粉の蓄積が不足した細胞やでん粉の糊化が不充分な細胞が観察されるが(図2)、「タマユタカ」では後者によるでん粉ゲルの保水性低下が本障害の発生に関与している。
3. 「タマユタカ」や高でん粉含量品種「ハイスターチ」はでん粉含量が低い品種(「沖縄100号」)に比べて中白障害が発生しやすい(表1)が、両者のでん粉糊化特性に顕著な差異はない。
4. 「タマユタカ」では、塊根肥大期に相当する9月から10月に土壌が過度に乾燥すると、塊根の水分含量の低下およびでん粉含量の増加を生じ、それに伴って障害の発生頻度が高まり、その程度も著しくなる(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 「タマユタカ」における中白障害の発生を抑止するためには、塊根の水分低下を回避するような圃場管理や収穫調整が有効である。
2. 糊化不良による中白の発生は、加工段階において蒸煮温度や時間を変える等の対策を行うことによりある程度防止できる可能性がある。また,でん粉糊化温度が「タマユタカ」等の通常品種に比べて低い品種・系統の利用も中白発生抑止効果を期待できる。


[具体的データ]



[その他]
研究課題名:蒸切干し甘しょの高品質化による国際競争力強化に関する研究
課題ID:08-02-04-02-08-05
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:中村善行、藏之内利和、中谷誠、石田信昭(食総研)、松田智明(茨城大)

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