収量性が高い酒造好適米の水稲新品種「とちぎ酒14」


[要約]
水稲「とちぎ酒14」は、晩生の早に属する粳種である。千粒重は「若水」と同程度に重く大粒で、「若水」より2割程度収量性が高い。心白の発現は小さく少ない。玄米タンパク質含有量が低く、淡麗ですっきりした純米酒向けの酒造好適米品種として、栃木県で奨励(認定)品種に採用された。

[キーワード]イネ、酒造好適米、多収、とちぎ酒14

[担当]栃木農試・作物経営部・作物品種開発研究室
[連絡先]電話028-665-7087
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 栃木県の酒造好適米は、五百万石中心に約60haが作付けされているが奨励品種はない。県内の多くの蔵元が県外産酒造好適米を使用している。栃木県酒造組合からはオリジナルの酒の生産販売にむけて、純米酒クラスに向く安価な栃木県オリジナルの酒造好適米が要望されている。
 そこで、収量性が高く栽培性に優れた酒造好適米を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「とちぎ酒14」は、「信交酒480号」を母、「関東177号」を父として1996年に人工交配して育成した系統である。
2. 「若水」に比べて出穂期は8日程度、成熟期は10日程度遅い、「晩生の早」に属する(表1)。
3. 「若水」に比べて稈長は長く、稈は「若水」並に太いが、稈質はやや柔らかく耐倒伏性は「若水」よりやや弱い、“やや強”である(表1)。
4. 玄米千粒重は「若水」並に重い(表1)。
5. いもち病抵抗性遺伝子型はPiai と推定され、圃場抵抗性は葉いもち「強」、穂いもち「やや強」で「若水」より強い(表1)。
6. 収量は「若水」より2割程度上回り多収である(表1)。
7. 心白は「若水」より小さく、大小は“小小”、多少は“少中”で外観品質は心白が少なく、「若水」より劣る“中中”である(表1)。
8. タンパク質含量が低く、できあがりの生成酒は雑味が出にくく、良好である。(表1表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 標高250m以上の県北高冷地を除いた県内全域の早植え栽培地帯に奨励(認定)品種として普及する(普及見込み面積は30ha)。
2. 耐倒伏性は「やや強」であるが、多肥栽培は倒伏と品質低下を招くので適正な肥培管 理を行う。
3. 熟期があさひの夢より遅いので移植は早くする。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:水稲新品種育成試験
予算区分:県単
研究期間:1996〜2004年度
研究担当者:伊澤由行、山口正篤、小林俊一、倉井耕一、五月女恭子、出口美里、藤井真弓、大谷和彦、大久保堯司、池田二朗
発表論文等:2004年10月品種登録申請

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