水稲に対する畜舎からの搬出敷料堆肥安定施肥法


[要約]
コシヒカリ早植栽培において、オガクズ牛ふん堆肥10aあたり2tを春施用し、出穂期前15日に窒素成分2kgを追肥することで、5年間は慣行栽培並の収量と玄米タンパク質含有率が得られる。

[キーワード]水稲、コシヒカリ、オガクズ牛ふん堆肥

[担当]栃木農試・作物経営部・作物研究室、栃木農試・環境技術部・土壌作物栄養研究室
[連絡先]電話028-665-7076
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 栃木県で家畜から排泄されるふん尿は年間約300万tと推定される。しかし栽培面では、土作りに有効とされながらも施用されなかったり、過剰施用で収量・品質を低下させる事例がある。そこで堆肥を有用な資源として、水稲栽培に安定して継続的に利用するための栽培法を検討した。

[成果の内容・特徴]
1. コシヒカリの早植栽培において、表1のオガクズ牛ふん堆肥(以下、堆肥)を10aあたり2〜4t施用、あるいは10aあたり2tの堆肥を春施用に窒素成分を基肥追加した場合、慣行栽培と比較して減収する。一方、堆肥のみの施用では玄米粗タンパク質含有率は慣行栽培よりも低くなる(図1)。
2. 10aあたり堆肥4tを春施用、または堆肥2tを春施用し窒素成分2kg以上を基肥に追加施用し、窒素成分2kgを追肥すると、生育量が多くなり倒伏により減収する(図1下の数値、慣行は2.1)。また、玄米粗タンパク質含有率が慣行栽培よりも高くなりやすい(図1)。
3. 10aあたり堆肥2tを春施用し、窒素成分1kgを基肥に追加施用し、窒素成分2kgを追肥すると収量は慣行並となるものの、玄米粗タンパク質含有率が慣行栽培よりもやや高くなる(図1)。
4. 10aあたり堆肥2tを春施用し、出穂期前15日に窒素成分2kgを追肥することで、慣行栽培並の玄米収量と玄米粗タンパク質含有率を得ることができる。ただし、千粒重が低下する傾向が認められる(図1上の数値、慣行は22.5g)。
5. 堆肥を2001〜2005年の5年間連年施用すると、収穫後土壌の可給態窒素が2001年の慣行と比べて10aあたり2t施用では約2mg/100g、4t施用では約5mg/100g上昇する(図2)。しかし、総籾数は、可給態窒素の上昇を反映せず、慣行栽培並〜低く推移するため堆肥連用による増収傾向はみられない(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果情報は、厚層多腐植質多湿黒ボク土における試験結果によるものである。
2. 慣行栽培とは、10aあたり窒素成分3kgを基肥に、出穂期前15日に窒素成分4kgの追肥である。
3. 6年以上連用した場合の施肥方法は、別途検討が必要である。
4. 堆肥の種類により生育は異なるので、堆肥の理化学性を把握した上で施用量を決定し、地域の生育診断指標値を参考に追肥量・時期を調節する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:畜舎からの搬出敷料堆肥の耕地還元システムの開発
予算区分:県単
研究期間:2001〜2005年度
研究担当者:青沼伸一、小林靖夫、薄井雅夫、青木純子、鈴木聡

目次へ戻る