不耕起V溝直播栽培を利用した水稲深水無落水栽培


[要約]
水稲品種「コシヒカリ」の不耕起V溝直播栽培において、入水時から25〜30cmの水深を保つ「深水無落水栽培」は、玄米外観品質を向上させる。また、慣行水深による栽培に比べ稈長は10〜15cm程度長くなるものの倒伏はみられず、出芽数が150本/m2以上であれば実用的な収量が確保できる。

[キーワード]水稲、コシヒカリ、深水無落水、不耕起V溝直播栽培、外観品質

[担当]愛知農総試・作物研究部・作物グループ
[連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海農業・水田畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 生育期間中に深い湛水条件で栽培をする「深水栽培」は、雑草発生量の低下や、無効分げつ発生の抑制に伴う肥料利用効率の向上等の報告があり、資材投入量低減の可能性を持っている。しかし、通常の移植栽培では「中干し」や「間断かんがい」を行うため用水量が多くなることや、生育ステージに合わせたこまめな水深管理が必要であることから、大規模農家が取り組むことは難しい。
 一方、2005年時点において本県で1,070haのほ場に普及している不耕起V溝直播栽培は、地耐力が大きいため中干し等を行う必要がなく、慣行移植栽培並に収量を確保することが可能である。
 そこで、さらなる環境調和型農業の確立を目指すため、県下で作付け面積が多い品種「コシヒカリ」において、不耕起V溝直播栽培を利用した深水無落水栽培(以下深水栽培)を構築する。

[成果の内容・特徴]
1. 深水栽培は、不耕起V溝直播栽培における、通常の入水期(2.0〜3.0葉)から25〜30cmの水深で栽培を行う。入水直後、稲体は完全に水没するものの、2〜3日程度で葉先が水面から出現する(写真)。
2. 深水栽培の草丈・稈長は、慣行水深(5〜10cm)の栽培(以降、慣行水深)に比較して10〜15cm程度高くなるが(図1)、倒伏しない(データ省略)。
3. 深水栽培の茎数は、慣行水深に比較して少なく推移するが、最高分げつからの減衰は小さく、穂数はほぼ同等になる(図1)。
4. 深水栽培は、出芽数が150本/m2以上であれば、実用的な収量(500kg/10a)が確保できる(図2)。また、出芽数が200本/m2以上では、窒素施肥量を通常の50%程度に削減しても大きな減収は認められない(図2)
5. 同一の栽培条件(施肥量、出芽数)であれば、深水栽培の玄米外観品質は慣行水深に比較して良好である(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. 十分な出芽数(150本/m2)が無いと穂数が不足し、減収する場合がある。
2. 深水栽培に最適な施肥法については、現在検討中である。


[具体的データ]



[その他]
研究課題名:水稲不耕起乾田直播を核とした次世代型水田輪作技術
予算区分:県単
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:林元樹、小出俊則、谷俊男、平岩確、野村有美、濱田千裕

目次へ戻る