水稲早期栽培におけるオガクズ牛ふん堆肥連用田の窒素発現と水稲生育の特徴


[要約]
オガクズを副資材とする牛ふん堆肥を水田へ連年施用した場合、施用3年目以降で窒素発現量が安定し年次による差が小さくなる。水稲の窒素吸収量は生育初期には少なく、最高分げつ期頃に急速に増加する。

[キーワード]イネ、水田、牛ふん堆肥、窒素発現量、窒素吸収量

[担当]三重科技セ・農業研究部・作物グループ、循環機能開発グループ
[連絡先]電話 0598-42-6359
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 酪農、肥育牛の経営規模は多頭化の傾向にあるが、それに伴い一カ所で大量の堆肥が生産される傾向にある。これら堆肥を水田へ投入することは家畜ふん処理と水田の土づくりの両面から有効である。しかし、水田への堆肥投入は堆肥由来の窒素発現によって水稲の生育が不安定となり施肥管理が難しくなる等の問題がある。そこで堆肥を水田に連用する場合の窒素発現、水稲の生育、窒素吸収等の特徴を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. オガクズ牛ふん堆肥は、水田に10a当たり3t、もしくは6t連用しても、施用初年度では窒素発現の増加は認められない。2年連用では、窒素発現の増加が認められるものの、水稲の分げつ期にあたる6月頃までの発現量は少ない(図1)。
2. オガクズ牛ふん堆肥を連用した場合、土壌の窒素発現は、量、パターンともに3年以上の連用によって概ね安定し、水稲の窒素吸収量、生育、収量も同様の推移をする(表1図1)。
3. 5年間オガクズ牛ふん堆肥を連用し、窒素発現が安定した水田における水稲窒素吸収の特徴は、有効茎確保期頃までの生育初期で吸収量が少なく、分げつ確保期から最高分げつ期頃に急激に増加する。幼穂形成期以降も窒素吸収量は増加するが、窒素追肥を行う慣行施肥体系の窒素吸収量と比べるとやや少ない(図2)。
4. 水稲品種「みえのゆめ」の場合、化成肥料を用いた慣行施肥と比べ、10a当たり3tの3年以上連用によりほぼ同等の窒素吸収量となり、穂数が確保されることから同等程度の玄米収量となる(表1)。また、10a当たり6tの堆肥連用では、水稲の倒伏は軽微であり(図表省略)、外観品質の低下はみられないことから水稲栽培の可能な範囲にある(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 供試した牛ふん堆肥は、オガクズを副資材とした乳用牛ふんをスクープ式連続発酵堆肥舎において3〜4ヶ月間堆積発酵させたもので、成分は5年間の平均値で全炭素39±8.9%(乾物)、全窒素1.4±0.19%(乾物)、燐酸(P205)1.6±0.6%(乾物)、カリ(K2O)2.7±0.29%(乾物)、C/N比28.3±4.2、水分72±4.7%である。
2. 細粒灰色低地土における事例であり、土壌条件や減水深によって窒素発現の特徴が変わる可能性がある。
3. 堆肥連用水田における水稲の施肥方法については今後検討予定である。また、6年以上の堆肥連用効果、および水稲に未利用の堆肥由来窒素やその他成分の環境負荷への影響については別途検討が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:資源循環型農業生産技術の確立と環境修復に関する研究
予算区分:県単
研究期間:2000〜2004
研究担当者:神田幸英(現伊賀農業研究室)、竹内雅己、出岡裕哉、中山幸則

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