耐倒伏性で加工適性に優れるだいず新品種候補系統「東山199号」


[要約]
大豆「東山199号」は「タチナガハ」よりやや早熟で、耐倒伏性に優れ青立ちが少ない中生系統である。ウイルス病抵抗性で褐斑粒が無く良質で、蛋白質含量が「タチナガハ」よりやや多く豆腐加工に適し、味噌加工適性も高い。

[キーワード]ダイズ、耐倒伏性、青立ち、莢先熟、ウイルス病抵抗性、加工適性

[担当]長野中信農試・畑作育種部
[連絡先]電話0263-52-1148
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物、作物・夏畑作物
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 関東・東山地域の基幹品種「タチナガハ」は、耐倒伏性に優れコンバイン収穫に適するが、青立ち株の発生による成熟期の不揃いから適期収穫ができないことがある。また、ウイルス病の発生する地域では、褐斑粒による品質低下が問題となる。
 そこで、「タチナガハ」の欠点を改良した、耐倒伏性で青立ちの発生が少なく、ダイズモザイク病抵抗性の大豆品種を育成する。あわせて、高蛋白質化により豆腐加工適性の改善を図る。

[成果の内容・特徴]
1. 「東山199号」は、平成2年に長野県中信農業試験場(農林水産省大豆育種指定試験地)において、「東山149号」(後の「アヤヒカリ」)を母、「長交1-28F1(オオツル/タチナガハ)」を父とした人工交配から育成された系統である(表1図1)。
2. 「タチナガハ」よりやや早熟の中生系統で、収量は「タチナガハ」並かやや優る(表1)。
3. 「タチナガハ」に比べ主茎長がやや短く、倒伏、蔓化が極めて少ない(表1)。
4. 莢先熟による青立ち(莢先熟)が少なく(表1)、成熟後の落葉や枯れ上りが斉一である。
5. 「タチナガハ」より粒大はやや小さいが、障害粒の発生が少なく外観品質に優れる(表1)。
6. 「タチナガハ」より蛋白質含量がやや多く(表1)、豆腐および味噌加工適性に優れる(表2)。
7. ダイズモザイク病に強く(表2)、ダイズモザイクウイルスのA、B、CおよびD系統に抵抗性がある。
8. 「タチナガハ」並に紫斑病に強く、黒根腐病抵抗性が「タチナガハ」よりやや強い(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 栽培適地は関東・東山地域で、長野県の認定品種に採用予定である。
2. 倒伏が少なく成熟が揃うのでコンバインによる適期収穫が可能で、汚粒やしわ粒のない良質大豆を低コストで生産できる。
3. 「タチナガハ」より生育量が少ないので、栽植密度を高めにして適切な肥培管理に努める。
4. 適期収穫を励行して、裂莢による収量損失を防止する。
5. ダイズシストセンチュウ抵抗性がないので連作を避け、発生したことのある圃場へは作付けしない。
6. 青み粒の発生が、「タチナガハ」よりやや多い。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:大豆新品種育成試験
予算区分:指定試験
研究期間:1990〜2005年度
研究担当者:矢ケ崎和弘、山田直弘、坂元秀彦、谷口岳志、牛山智彦、高松光生、高橋信夫、小林勉、元木悟、重盛勲、田中進久、西牧清、小野佳枝

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