ダイズ「タチナガハ」および「納豆小粒」の晩播栽培における狭畦密植栽培技術


[要約]
7月中旬以降に「タチナガハ」および「納豆小粒」を播種する場合は畦間30cm(狭畦)にすることで収量の低下を軽減できる。その際の株間は7月中旬播種では15cmとし、7月下旬の播種では10〜15cmのやや密植とする。

[キーワード]ダイズ、タチナガハ、納豆小粒、晩播、狭畦、密植

[担当]茨城農総セ農研・作物研究室
[連絡先]電話029-239-7212
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作物
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 県内産大豆の水田における作付けが増加し、梅雨時期の降雨や規模拡大に伴い、県栽培基準での晩播限界である7月10日以降に播種される例が多い。しかし現行の栽植様式では、播種が遅くなるほど生育量が確保できず莢数が減少し収量が大幅に低下する。そこで、本県主力品種である「タチナガハ」・「納豆小粒」の極晩播における無中耕・無培土を前提とした狭畦密植栽培による収量低下軽減技術を確立する。

[成果の内容・特徴]
1. 標準畦(畦間60cm)栽培における収量は、「タチナガハ」・「納豆小粒」とも播種適期である6月20日頃から7月10日頃の播種まではほぼ同等であるが、それ以降の播種では分枝数やm2当たりの莢数が減少して、「タチナガハ」で約30〜40%の減収、「納豆小粒」で30〜60%の減収となる(表1)。
2. 7月中旬以降に播種する場合、両品種とも畦間30cm(狭畦)にすることでm2当たり莢数が増加し、晩播による収量の低下を軽減できる(表1図1)。
3. 狭畦での株間は、収量および種子コストの観点から両品種とも7月中旬播種では15cmとし、7月下旬に播種する場合は10〜15cmとする(表1図1)。
4. 現地および所内大区画圃場における試験では、5圃場中、4圃場で狭畦密植区が標準畦区の収量を上回り、現地適応性も認められる(図2)。
5. 同一播種期において、畦間および栽植密度の違いが粗蛋白質含有率に与える影響は認められない(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本技術は、やむを得ず適期播種が出来なかった場合および大面積作付農家への対応技術である。
2. 本技術では中耕除草作業の省略を想定しているため、播種後の除草剤による土壌処理を行い、生育初期の雑草防除を徹底する。
3. 納豆小粒」は播種が遅れると粒が大きくなり、且つ減収程度が大きいため、7月末の播種は避ける。
4. 狭畦栽培における倒伏程度は、標準畦栽培・培土有りに比べた場合大きくなる傾向があるとともに、現地試験で狭畦密植による収量増加の効果が認められなかった1圃場は(図2)、蔓化が原因であったことから、地力との関連も含めさらなる検討が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:関東における稲乾田直播、麦・大豆不耕起栽培を中軸とした大豆新栽培システムの確立
課題ID:11−3−1−042−1
予算区分:ブランドニッポン(2系:大豆)
研究期間:2002〜2004年
研究担当者:松浦和哉、樫村英一、鈴木正明

目次へ戻る