小麦「イワイノダイチ」の奨励品種採用

早播による凍霜害及び入梅後収穫による品質低下を生じ易い「農林61号」を補完する早熟品種として、多収で栽培特性や製粉・製麺性が優れる「イワイノダイチ」を奨励品種に採用する。

　小麦「農林61号」は、県民食料確保計画に基づいて県下各地で増産されているものの、面積拡大に伴い、早播による凍霜害の発生、或いは入梅後の雨間収穫により、低アミロ麦の発生はないものの、粒の退色や容積重の低下など品質低下が生じて問題となっている。そこで、より早熟で凍霜害が少なく、しかも製粉性や製麺性が優れる「イワイノダイチ」を奨励品種に採用し、県内の小麦生産の安定化を図る。

「農林61号」と比較して次の特徴があるので、奨励品種に採用する。
１．	播性がIVで、早期茎立ちによる凍霜害の被害が少ない（育成地情報）。
２．	出穂期は3日、成熟期は2日早い（表1）。
３．	稈長は7cm程度短く、倒伏に強い（表1）。
４．	穂数は多く、穂長もやや長く、多収である（表1）。
５．	千粒重は重い（表1）。
６．	外観品質はやや優れ、粒は同じく赤粒種である（表1）。
７．	原粒粗蛋白質含量は0.5％程度低い（表1）。
８．	ミリングスコアや粉色が優れる（表2）。
９．	麺色、粘弾性及び総合点の製麺性が優れる（表2）。

１．	栽培地帯と播種期の組合せにより入梅前の収穫完了が期待でき、品質低下が避けられる。
２．	晩播すると蛋白質含量が高くなり易く（表3、表4）、粉と麺の色調を劣化させるため（表3）、適正な栽培管理に努め、粗蛋白質含量を上げ易い晩播や出穂期以降の追肥を避ける。
３．	ふ色及び粒色が農林61号と同じであるため、収穫調製時の混種に留意する。
４．	適地適作と民間流通を考慮して、現段階では農林61号の補完品種として普及開始するが、順次作付面積を拡大していく（普及予定面積は、農林61号と完全入替えが可能と判断されれば、2,000ha）。

［具体的データ］

研究課題名：主要農作物における奨励品種決定調査及び種子生産事業
予算区分：県単
研究期間：1998〜2004年度
研究担当者：吉田一昭、荒井輝博、松古浩樹、宇次原清尚