夏期湛水による麦作難防除雑草カラスムギおよびネズミムギの防除効


[要約]
麦作難防除雑草のカラスムギ種子は、夏期の常時湛水条件で15日以内に死滅するが、間断潅水条件では死滅率は低下する。ネズミムギ種子は50日間程度の常時湛水条件で約90%死滅するが、間断潅水条件では50日でも死滅効果が得られない。

[キーワード]カラスムギ、ネズミムギ、種子死滅、湛水期間、間断潅水

[担当]静岡農試・作物部
[連絡先]電話0538-33-6678
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・水田畑作(冬作物)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 近年、静岡県中遠地域の麦作圃場でネズミムギ(イタリアンライグラス)やカラスムギが侵入・拡大してきている。特にネズミムギによる雑草害が甚大で、収量低下はもとより、収穫放棄圃場も出現している。両草種の耕種的防除法を確立するため、夏期湛水による種子の死滅効果を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. カラスムギ種子は夏期の15日間程度の常時湛水条件で発芽力を完全に失う。間断潅水条件でも死滅効果はあるが、断水による湛水効果の抑制のため60%の死滅に35日間要する(図1図2)。
2. ネズミムギ種子は、夏期の常時湛水条件では20日間以上から死滅効果が現れ、50日間程度で約90%死滅する。間断潅水条件では50日経過しても死滅効果が現れない(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. カラスムギ、ネズミムギの蔓延した転換畑を復田または湛水して両草種を防除する際の湛水期間の目安となる。
2. 試験は漏水のある砂壌土圃場で実施し、試験期間の日平均地温は、常時湛水条件で28.4℃、間断潅水条件で28.6℃、畑条件で28.6℃であった。常時湛水条件は一定の水深を維持するよう入水量を調節した掛け流し管理とした。したがって漏水の少ない圃場や止め水管理では、より地温が上昇するため短期間で死滅効果が現れると推察される。
3. 6月下旬に湛水を開始する麦跡水稲作圃場では、カラスムギ種子はほぼ死滅するが、ネズミムギ種子の死滅には60日以上の常時湛水期間が必要と考えられる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:水田・畑作における難防除雑草制御技術の確立
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:木田揚一、石田義樹

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