被覆尿素と畦内施肥を組合せたコマツナ・ホウレンソウの3作1回施肥による窒素減肥


[要約]
コマツナ及びホウレンソウの3作栽培において、溶出日数の異なる被覆尿素を組み合わせて用いることにより、3作1回の施肥で栽培が可能である。また、畦内施肥を組み合わせることにより窒素施肥量を3割削減することができる。

[キーワード]コマツナ、ホウレンソウ、3作1回施肥、被覆肥料、畦内施肥、窒素減肥

[担当]埼玉農総研・園芸研究所・露地野菜担当
[連絡先]電話042-985-2206
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 埼玉県南西部の露地野菜地帯では周年的に葉根菜類の栽培が盛んに行われ、それに伴い施肥による地下水の硝酸性窒素濃度の上昇が懸念されている。
 そこで、露地野菜畑の窒素削減技術を開発するため、葉菜類(コマツナ及びホウレンソウ3作栽培)において、被覆窒素肥料と畦内施肥を組み合わせた施肥法が生育・収量に及ぼす影響について明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. ホウレンソウ1作、コマツナ2作の栽培(栽培期間約100日)において、長期溶出(140日タイプ)の被覆燐硝安加里に比べ、溶出日数の異なる被覆尿素(40:80:120日タイプ=5.2:5.2:4.0%)を組み合わせた肥料を1回施肥することにより、3作の安定した収量を得ることができる(表1)。
2. ホウレンソウ及びコマツナを作付けする畦にのみ施肥(畦内施肥)を実施することにより2割の窒素施肥量の削減が可能である(表1)。
3. 春から夏にかけての栽培では、被覆尿素を組み合わせた肥料の窒素成分の溶出はほぼ直線的な溶出を示した(図1)。
4. コマツナを周年栽培している現地において、被覆尿素を組み合わせた肥料と畦内施肥を組み合わせた3作1回施肥では、窒素施肥量を3割削減しても速効性化成肥料を毎作施用する栽培とほぼ同等の収量・品質を得ることができる(表2)。
5. 春から夏にかけてのコマツナの3作1回施肥の窒素吸収量は0.6〜1.0kg/aで、3作の合計では2.4kg/a程度となる。被覆尿素と畦内施肥を組み合わせた3作1回施肥の施肥窒素利用率は47.8〜56.7%と、毎作施肥する場合に比べ向上する(表3)。

[成果の活用面・留意点]
1. この施肥法は、春から夏の地温が高まる作期において、肥料の効果が安定して得られる。
2. 黒ボク土露地野菜地帯で適用でき、この施肥法を行うことにより硝酸性窒素が与える環境負荷を低減することが期待できる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:屋敷林−畑−平地林の窒素循環と環境負荷物質の適正管理及び低減化技術の開発
予算区分:交付金プロ
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:山武ー民、日高伸(農総研 生産環境担当)

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