生ごみ処理物塩分(塩化物イオン)含有量の簡易測定法


[要約]
生ごみ処理物の塩分濃度は、生ごみ処理物の水抽出ろ液を生コンクリートおよび細骨材中の塩化物イオン測定用の試験紙で測定することによって評価が可能である。

[キーワード]生ごみ処理物、塩分、簡易測定、塩化物イオン、試験紙

[担当]神奈川農技セ・農業環境研究部
[連絡先]電話0463-58-0333
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 これまでに、著者らは、成分値などから生ごみ処理物に含まれる塩分が作物生育に影響を与える可能性は低いと考えられることを示してきた。
 しかし、一方では、農家の生ごみを材料とする堆肥での塩分の影響を懸念する声も多い。また、食材によっては、塩分含有量の多いものもあるため、塩分含有量の高い資材を集中的に利用した場合、塩分含有量の高い製品となる可能性も考えられる。
 このため、生ごみ処理物(生ごみ乾燥物、堆肥化物)中の塩分の簡易な測定方法について検討し、実用化する。

[成果の内容・特徴]
1. 水質測定キットとして販売されている(パックテスト 共立理化学研究所 測定原理;硝酸銀比色法)では、生ごみ処理物水抽出ろ液中の有機物が発色を阻害するため、塩分測定に用いることはできない(図未掲載)。
2. 続いて、生コンクリートおよび細骨材中の塩化物イオン測定試験紙(カンタブ 太平洋マテリアル 測定原理;硝酸銀滴定法)の生ごみ処理物中の塩化物イオン含有量測定への適用を検討した。試験紙の概要及び使用法は、図1のとおりである。
3. 懸濁液を供試した場合は、湿気指示部の変色が確認できず、指示値が低下した。この原因は、吸水口の目詰まりにより吸水阻害が生じ、吸水が充分に行われなかったため考えられる(表1)。
4. 生ごみ処理物の抽出ろ液を供試すると測定指示値は上昇する。このため、供試液は、ろ過操作を行うことが必要である(表1)。
5. 収集した生ごみ処理物や他材料の堆肥合計23点を対象に、水抽出ろ液を測定すると、本試験紙測定値はイオンクロマトグラフ測定値と高い相関(r=0.9893)を示す(図2)。
6. 試験紙測定値(NaCl)は、イオンクロマトグラフ測定値の7〜9割と若干低い値となるが、Y=1.16X+0.09(X:試験紙測定値(NaCl)、Y:イオンクロマトグラフ測定値(NaCl))の回帰式で換算できる(図2)。
7. 試験紙による生ごみ処理物塩分濃度測定操作手順は、図3のとおりである。

[成果の活用面・留意点]
1. 通常の生ごみ処理物では、1.9%(NaCl換算)程度であるので指示値(条件;10倍容抽出、試料含水率10%の時)は、3.8〜4程度である。
2. 全国食品リサイクル協会等の生ごみ堆肥品質基準では、NaCl濃度5%以内である。試験紙指示値(条件;10倍容抽出、試料含水率10%)では、NaCl濃度5%は6程度となるので、これ以上の資材については、使用しない。
3. 試験紙による測定は、指示値が4以上では精度が低下するので濃度換算を行う際は指示値が2〜4になるように希釈することが必要である。
4. 測定には、イオン交換水を用いる。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:リサイクル製品の有効性・安全性の評価
予算区分:県単
研究期間:2003〜2004年度
研究担当者:竹本 稔、武田 甲、藤原俊六郎

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