窒素施肥深度の違いがホウレンソウとダイコンの生育・窒素吸収に及ぼす影響


[要約]
ホウレンソウの生育と窒素吸収は、0〜15cmの土壌中窒素濃度に依存する。 ダイコンは、0〜60cmの施肥窒素を吸収でき、窒素吸収量は土壌への投入量に応じて増加する。

[キーワード]窒素吸収、施肥深度、施肥濃度、ホウレンソウ、ダイコン、根箱

[担当]千葉農総研・生産環境部・環境機能研究室
[連絡先]電話043-291-9995
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 減肥技術の開発に当たっては、それぞれの野菜に適切な施肥深度や土壌診断の土層の深さなどについて明らかにする必要がある。しかし、野菜の根域や窒素吸収域の情報は少なく、施肥深度と窒素の吸収・利用との関係はほとんど明らかになっていない。ここでは、根箱を利用して、肥料窒素の施肥深度及び施肥濃度と野菜の生育・窒素吸収との関係を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. 試験1:施肥深度と野菜の生育・窒素吸収。各層の施肥窒素量は一定で、肥料を含 む層の深さを変えた。100%1層区(施肥の深さ0〜15cm)、100%2層区(同0〜30cm)、 100%3層区(同0〜45cm)、100%4層区(同0〜60cm)及び無窒素区を設けた。
試験2:施肥濃度と野菜の生育・窒素吸収。総窒素量は一定で、各層の施肥窒素の濃 度を変えた。100%1層区(同0〜15cm)、50%2層区(同0〜30cm)、33%3層区(同0 〜45cm)、25%4層区(同0〜60cm)及び無窒素区を設けた。
2. ホウレンソウの株重と窒素吸収量は、施肥深度試験では100%1層から4層の各区に差がなく(図1)、施肥濃度試験では100%>50%>33%>25%と低下した(図2)。
3. ダイコンの株重は、施肥深度試験では100%1層区に対し、100%2層区以上で増加し、窒素吸収量は施肥深度が深く、総施肥量が多くなるほど増加した(図3)。また、施肥濃度試験では濃度を低くして深く施肥した場合、株重が同等で、窒素吸収量が増加した(図4)。
4. 以上のことから、ホウレンソウの生育と窒素吸収量は、0〜15cmの土層における窒素の施肥濃度に依存した。ダイコンは、施肥位置が深くなるほどまさり、窒素吸収量は、0〜60cmの土層における窒素の総施肥量に依存した。

[成果の活用面・留意点]
1. 根箱は、縦方向にふたつに切断した内径30cm、高さ60cmの塩ビ円筒管を用いた。合体した塩ビ管に肥料を混和した土壌(黒ボク下層土:赤土)を7.5cm層ごとに、8〜10kg/cm2 程度の圧力で充填した。
2. 100%1層とは、土層15cmに窒素成分15kg/10a相当を混和したものである。供試肥料は、りん硝安加里とした。また、各層に100kg/10aの苦土石灰を施用した。
3. 栽植本数は、ホウレンソウが根箱当たり3株、ダイコンが同1株とした。
4. 深さ20cmのpF値が2.3以上になった時に、20mm相当のかん水を行った。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:根箱における施肥位置の違いが野菜の生育・窒素吸収に及ぼす影響
予算区分 :県単
研究期間 :2003〜2005年度
研究担当者:山本二美、松丸恒夫

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