牛ふん堆肥に残留するクロピラリド等ホルモン型除草剤の生物検定法


[要約]
牛ふん堆肥に植物に対して有害なレベルで残留したホルモン型除草剤を検出するには、堆肥を混合した土壌でさやえんどうを3週間程度栽培する生物検定法が簡易な手法として有効である。

[キーワード]牛ふん堆肥、ホルモン型除草剤、クロピラリド、生物検定、さやえんどう

[担当]長野中信試・畑作栽培部
[連絡先]電話 0263-52-1148
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 近年、ホルモン型除草剤クロピラリドが残留した牛ふん堆肥を施用したトマト栽培などにおいて生育異常が発生する被害が全国的に報告されている。除草剤成分の残留は、液体クロマトグラフ質量分析計などで化学分析が可能であるが、コスト・設備の面から農業現場には向かない。そこで、堆肥センターなどの現場で簡易に行うことができる生物検定法を早急に確立する。

[成果の内容・特徴]
1. ミニトマト、大豆、さやえんどう、ひまわりについて検討した結果、いずれもクロピラリド残留堆肥において生育異常を示し、検定に利用可能と考えらる(図1)。栽培や判定の容易さ等から生物検定に用いる作物は、さやえんどうが有効である(表1)。
2. 本法は、クロピラリド等のホルモン型除草剤が、さやえんどうに対して特徴的な症状を示すことを利用した方法であり、具体的な検定の手順は以下のとおりである。
(1)堆肥と育苗用培土を容量比で堆肥:培土=1:5(8〜12t/10a相当量)の割合で良く混合し、500ml程度の容器を用いて、さやえんどう3粒を等間隔に播種する。対照区は、育苗用培土のみで栽培を行う。
(2)気温が15〜25度となるような日当たりの良い場所で、乾燥させないように栽培を行う。対照区の第5葉が完全に展開(21日程度)した後、生育異常の有無について調査し、対照区と比較する。
(3) 生育が対照区と同等であれば残留していないか、かなり低濃度である。
 クロピラリドが残留している堆肥は、3〜4葉から上位の葉がカップ状に変形する。さらに高濃度で残留している堆肥は、上位葉がひどく変形し、茎がねじれ生育が停止することがある(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 特に、クロピラリド等のピリジン系除草剤は堆肥に残留し易く、作物に被害を及ぼす可能性が高い。
2. 検定の結果、残留の疑いがある堆肥は施用を見合わせ、特に感受性の高い作物に対しての施用は行わない。
3. 対象物質は水溶性で土壌吸着性が低いため、底穴のない容器を用いる。また、容器は半透明で土壌水分状況が目視できるPE製カップが便利である。
4. 育苗用培土は、家畜糞堆肥が混合されていないことが確認されたものを使用する。
5. 堆肥の比率を高めると、検出感度が高まるが、出芽阻害など他の要因による生育障害が発生することがある。
6. さやえんどうの品種は、「あずみ野30日絹莢PMR」(サカタのタネ)を用いた。
7. 15度以下の低温では、生育が遅延しやすく、また蒸散量の減少に伴い検出感度が低下する恐れがあるため、冬季に検定する場合には保温対策を行う。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:野菜の安定生産試験
予算区分:県単(基礎)
研究期間:2005年度
研究担当者:佐藤強、吉田清志、茂原泉

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