土壌0.01M塩酸抽出カドミウム濃度を基礎とした水稲カドミウム吸収抑制対策


[要約]
土壌0.01M塩酸抽出カドミウム濃度は、出穂以降無湛水かつ乾燥条件(カドミウム高吸収条件下)で栽培した水稲の玄米カドミウム濃度と正の相関関係があり、効率的なカドミウム吸収抑制対策に利用できる。

[キーワード]イネ、0.01M塩酸抽出、土壌カドミウム濃度、玄米カドミウム濃度、吸収抑制対策

[担当]三重科技セ・農業研究部・循環機能開発グループ
[連絡先]電話0598-42-6361
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 水稲のカドミウム吸収抑制対策としては湛水管理が有効であるが、収穫直前までの湛水は収穫作業効率の低下や産米の品質低下を引き起こす場合がある。そのため、玄米カドミウム濃度の低い地域では慣行の水管理が望まれ、湛水管理による吸収抑制対策の必要性には濃淡がある。一方、慣行栽培における玄米カドミウム濃度は水管理による影響が大きく、土壌カドミウム濃度からの玄米カドミウム濃度の推定手法は確立されていない。そこで、湛水の影響を除外し、出穂以降無湛水かつ乾燥条件(カドミウム高吸収条件)下で栽培した水稲の玄米カドミウム濃度を、その土壌における最高濃度として評価し、この濃度を推定可能な抽出法による土壌カドミウム濃度を、カドミウム吸収抑制対策実施の指標とする。

[成果の内容・特徴]
1. 土壌0.01M塩酸抽出カドミウムは、他の抽出液と比較して、カドミウム高吸収条件下で栽培した水稲の玄米カドミウム濃度と高い相関関係が認められる(表1)。
2. カドミウム高吸収条件下での水稲栽培では、土壌0.01M塩酸抽出カドミウム濃度と玄米カドミウム濃度は相関が高く、土壌カドミウム濃度からその土壌における玄米カドミウム濃度を推定できる。また、同地点の土壌を出穂以降も湛水処理を行うことにより、玄米カドミウム濃度は0.02mg/kg以下に低減できる(図1)。
3. 慣行水管理を実施した現地調査における玄米カドミウム濃度は、カドミウム高吸収条件下での玄米カドミウム濃度推定値よりも低濃度域に分布する。この推定式を用いて湛水管理指導の必要性を設定することができ、効率的なカドミウム吸収抑制対策が実施できる(図2)。
4. 玄米カドミウム濃度目標値を0.4mg/kgとする場合、推定誤差を考慮し土壌0.01M塩酸抽出カドミウム濃度0.09mg/kg以上の地点を重点指導地域として設定できる(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. ここで設定した玄米カドミウム最高濃度は、水稲品種としてコシヒカリ、非汚染地土壌を用い、出穂以降無湛水かつ乾燥条件(土壌Eh0.3〜0.6V)としてポット栽培を実施した試験により得られた数値である。
2. カドミウム高吸収条件下での玄米カドミウム濃度推定値は、0.4mg/kg以上の領域では過大評価されるが、吸収抑制対策の実施指標とする観点からは問題ない。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:イネ・ムギ・ダイズにおけるカドミウム吸収抑制に関する研究
予算区分: 県単
研究期間: 2003〜2005年度
研究担当者: 出岡裕哉、地主昭博

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