石灰硫黄系資材を濾材としたバイオジオフィルターによる養液栽培排液の浄化


[要約]
バイオジオフィルター水路の濾材として石灰硫黄系資材を用いることで、窒素やリンを高濃度に含む養液栽培排液を施設面積の3.5%程度の水路で効率的に浄化でき、窒素濃度を通年10 mg L-1以下に低減できる。

[キーワード]バイオジオフィルター、石灰硫黄系資材、養液栽培排液、栄養塩類、水質浄化、エンサイ、ポーチュラカ

[担当]中央農研・土壌肥料部・水質保全研究室
[連絡先]電話029-838-8829
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、共通基盤・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 わが国の養液栽培施設面積は近年、増加傾向にあり、高濃度の硝酸性窒素やリンを含む排液による環境負荷が懸念されている。特に、ロックウール栽培システムは、培養液を掛け流しするタイプが主体で、培養液の2〜4割が排出されている。従来のゼオライトを濾材とするバイオジオフィルター(BGF)水路は養液栽培からの窒素、リン負荷は低減できるが、植物の蒸発散により濃度が低下しないなどの問題があった。そこで、BGF水路の濾材として石灰硫黄系資材(SC)を用いることにより、処理水の窒素濃度を公共用水域の環境基準である10 mg L-1以下に低減し、リンも浄化可能なシステムを開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 茨城県内のバラロックウール栽培ハウス脇(野外)に、SC充填量が異なる3系列(A、B、C)のBGF水路(図1)を設置し浄化試験を行うと、1年目のエンサイ、2年目のポーチュラカとも旺盛な生育を示し、SCはBGF水路の濾材として利用可能である。
2. SC充填量の多いAおよびB水路の処理水硝酸性窒素濃度は、施設排液の平均濃度107 mg L-1に対して、寒候期でも10 mg L-1以下となり(表1)、全期間の窒素除去割合はほぼ100%である(表2)。SC量の少ないC水路では1年目の寒候期以降、処理水濃度は10 mg L-1を超える (表1)。
3. 処理水リン酸態リン濃度は、施設排液の平均濃度16.6 mg L-1に対して、1年目の暖候期エンサイ栽植時には3水路とも約1/3となり、除去割合も7割となる(表1,2)。寒候期の浄化速度は低下するが、全期間でみると、濃度はA水路で半減、BおよびC水路で3割減、除去割合はA水路では5割、BおよびC水路では3割となる (表1,2)。
4. エンサイはバイオマス量が多く収支に占める植物吸収の寄与は窒素で3〜4割、リンで4〜5割と高かったが、バイオマス量の少ないポーチュラカでは窒素、リンとも3〜4%と低い(図2)。
5. 養液栽培施設からの排液量を10 a当たり700 Lと仮定し、全期間の施設排液平均濃度とB水路の平均窒素浄化速度(2.2 g m-2 d-1)を基に試算すると、養液栽培施設面積の3.5%(10 a当たり35 m2)のBGF水路により、窒素をほぼ100%、リンはエンサイ栽植時(0.27 g m-2 d-1)には7割、ポーチュラカ栽植時(0.17 g m-2 d-1)には4割浄化可能である。エンサイを栽植すればポーチュラカに比べリンの負荷を低減でき、SCの消耗量も少ないと考えられる。

[成果の活用面・留意点]
1. 養液栽培排液浄化の基礎資料とする。施設からの排液量や排液濃度に合わせBGF水路の規模や資材量を設計する。
2. 施設の軒下や空き地を利用してBGF水路を設置する場合、花きであるポーチュラカは修景効果が期待出来る。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:微生物資材等を用いた養液栽培排液の資源循環型水質浄化技術の開発
課題ID:03-06-06-*-09-05
予算区分:交付金
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:太田健、井原啓貴、前田守弘、阿部薫(農環研)

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