水田土壌の潜在的脱窒能力を定点調査結果から推定した


[要約]
水田土壌の潜在的脱窒能力(脱窒酵素活性)は可給態窒素および遊離酸化鉄測定値から予測可能である。定点調査の可給態窒素および遊離酸化鉄測定値から土壌統群別の脱窒酵素活性を推定すると、相対的に腐植質の多湿黒ボク土で高く,灰色低地土や褐色低地土で低い。

[キーワード]水田土壌、脱窒、定点調査、可給態窒素、遊離酸化鉄

[担当]栃木農試・環境技術部・環境保全研究室
[連絡先]電話028-665-7148
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 水田の具体的な窒素浄化能力やその土壌間差および県内における分布を明らかにし、水田の多面的機能としての窒素浄化能力を活用した県内水環境の維持、また水利用計画や土地利用計画に資する。

[成果の内容・特徴]
1. 水田土壌の脱窒酵素活性は代かき後徐々に高まり、多湿黒ボク土は非黒ボク土よりも常に高い傾向にある(図1)。
2. 脱窒酵素活性および脱窒容量は、可給態窒素および遊離酸化鉄含量を独立変数とする重回帰式によって予測可能である(図23)。水稲一作期間中の脱窒酵素活性積算値の予測式は次のとおりである。
3. 水田土壌の脱窒酵素活性および脱窒容量はアセチレン阻害法で測定する。つまり、100mL容三角フラスコに生土20gおよび培養液20mLを入れ、ヘッドスペースを窒素で置換後、更にアセチレン10mLを加え、25℃で緩やかに振とうしながらヘッドスペースの亜酸化窒素(N2O)濃度の増加速度をECD付きガスクロマトグラフで測定する。なお、培養液の組成は,脱窒酵素活性とし、KNO30.721g+グルコース1.8g+クロラムフェニコル0.225g/L、脱窒容量としてKNO3 0.721g+クロラムフェニコル0.225g/Lを使用する。また、可給態窒素を4週間培養法により,更に遊離酸化鉄をジチオナイト-クエン酸塩還元溶解法によって測定する。
4. 一作期間中の脱窒酵素活性積算値の予測式(式1)ならびに定点調査による可給態窒素および遊離酸化鉄含量から、土壌統群ごとの脱窒酵素活性代表値を推定すると、相対的に腐植質の多湿黒ボク土で高く,灰色低地土およびグライ土で低く,また褐色低地土で更に低いという土壌間差がある(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果で示す脱窒酵素活性は、作土土壌の25℃における潜在的脱窒能力を示す。
2. これまでに田面水の窒素濃度の変化等から算出された脱窒速度は,0.2〜1.0gNm-2day-1程度で,本調査結果の1/10程度である。水田の脱窒速度は流入水の硝酸塩濃度、田面流去速度、浸透速度または地温等に影響される。水田の脱窒能力を、地域の水環境の維持に活用するためには、それら要因の強度と脱窒速度との関連を明らかにして、潜在能力と実水田での脱窒速度を関連づけることが必要である。


[具体的データ]



[その他]
研究課題名:水田における水質浄化能の評価
予算区分:県単
研究期間:1999〜2005年度
研究担当者:亀和田國彦、齋藤匡彦、京島理恵、上岡啓之

目次へ戻る