イネ、ダイズ子実カドミウム濃度の収穫前迅速予測法


[要約]
水稲については穂揃い後の若い穂または止葉、大豆については幼夾期の葉または幼夾の乾燥粉末を希硝酸で抽出し、ICP-MSでカドミウム濃度を高感度測定することによって、子実のカドミウム濃度を迅速簡易に予測することができる。

[キーワード]カドミウム、玄米、大豆、予測、ICP-MS

[担当]中央農研・土壌肥料部・土壌管理研究室
[連絡先]電話029-838-8827
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・土壌肥料、共通基盤・土壌肥料
[分類]行政・参考

[背景・ねらい]
 CODEXによる食品カドミウム(Cd)基準値設定の動きに伴い、より厳しい収穫物中Cd濃度管理や区分収穫などを見通して、農作物のCd濃度を収穫前に予測する技術が求められている。そこで、生育途中の作物体中Cdを簡易、高感度かつ迅速に測定することによって、稲及び大豆子実のCd濃度を予測する技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 作物体粉末試料中のCdは希酸(0.1M硝酸1:200)抽出-ICP-MS分析によって簡易迅速かつ高感度で定量することができる(図1)。また必要に応じ、1M塩酸1:20(H16北陸成果情報)あるいは1M硝酸1:20などによっても同様に抽出、定量が可能である。)
2. 生育途中の作物体と子実のCd濃度の相関は時期が遅いほど高く、部位別には葉身よりも幼夾や若い穂の方が高い相関を示す(表1)。
3. 水稲の止葉葉身や若い穂と子実のCd濃度の回帰関係は、20種類の土壌、水田圃場とポット栽培、慣行栽培と間断潅がい、ぬか施用栽培などを含み、品種についてはキヌヒカリ、コシヒカリ、日本晴、ホシアオバを含むさまざまな条件において実施した3年間の観測において安定している(図2)。
4. 但し、出穂期の止葉葉身や若い穂と玄米のCd濃度の関係は、それ以降の水管理を湛水とするか落水とするかによって変化し、落水すると玄米のCd濃度が大幅に高まる(図3)。この点は"予測"の精度を大きく限定するが、逆の面で"予測"結果に応じてその後の水管理を調節するなどの形で利用がある。
5. 以上を要約すると、水稲では穂揃い後に若い穂または止葉を、大豆については幼夾期(発育段階R5相当)に葉または幼夾を採取乾燥粉砕し、試料0.1gに0.1M硝酸20mLを加えて1時間振とう後ろ過し、ICP-MSでCd濃度を測定することによって、子実のCd濃度を迅速簡易かつ高感度に予測することができる。

[成果の活用面・留意点]
1. 標準的な手順で、熱風乾燥に一夜、粉砕は100点/人/日程度、抽出は50点/人/日、ICP-MSによる測定時間は2分/サンプル程度を要する。
2. 現地に適用する際には、回帰係数、圃場内変動等を確認する必要がある。
3. 0.4ppm程度の比較的高濃度のCdを対象とする場合にはICP-発光法や原子吸光(グラファイト)法でも測定可能である。
4. 区画整理など、圃場の条件によっては圃場内の変動が大きい場合があるので留意する必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:イネ・ダイズにおける子実中カドミウム濃度の収穫前迅速予測技術の開発
課題ID:03-06-01-*-18-05
予算区分:有害物質カドミウム
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:伊藤純雄、高橋 茂、脇門英美

目次へ戻る