ハーブ類の栽培で発生する病害


[要約]
ハーブ類に16種新病害の発生を認めた。被害の大きいスペアミントうどんこ病の防除には炭酸水素ナトリウム水溶剤と炭酸水素カリウム水溶剤の散布が有効である。

[キーワード]ハーブ類、新病害、薬剤防除、スペアミント、うどんこ病

[担当]東京農総研・安全環境科・病害虫害管理研究室、富山県立大、筑波大
[連絡先]電話042-528-0520
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 現在、マイナー作物に対する緊急の農薬登録の拡大が実施されている。東京都はハーブ類における薬剤登録の主査として、病害虫の被害実態を解明し、防除対策を講じている。本報ではハーブ類に発生する病害の病原を究明し、特に被害が甚大なスペアミントうどんこ病に対する野菜類作物群登録薬剤の有効性を明らかにする。

[成果の内容・特徴]
1. ハーブ類の19病害について、形態と病原性から病原菌を同定し、うち新病害16種に病名を付した。病徴を下記に、病原菌、被害作物および被害程度を表1に示す。
(1)うどんこ病:施設栽培においてセリ科のイタリアンパセリ、フェンネル、ディル、シソ科のスペアミント、レモンバーム、セージ、ローズマリーに、露地栽培ではキク科のジャーマン・カモミールに発生する。株全体が白色菌叢に覆われ、新梢、新葉の捻れなどの奇形、茎葉の枯死を起こす。茎葉部を収穫するハーブ類では壊滅的な被害を生じる。
(2) さび病:施設栽培のスペアミントに発生する。葉に1-3mmの黄色斑点を多数生じ、裏面に橙黄色の粉状の夏胞子堆が発生し、のち葉枯れを起こす。
(3)灰色かび病:バジル、ラベンダーおよびステビアの主に施設栽培で発生する。葉、茎、花に暗褐色、不整形の病斑が拡大、灰褐色、粉状の菌体を生じ、葉枯れを起こす。
(4)褐斑病:シソ科のラベンダー、バジルの施設栽培で発生する。葉に褐色、不整形の病斑を生じて落葉し、ラベンダーではときに地際茎部〜根部が褐変して立ち枯れる。
(5)紫斑病:バジルの施設栽培で発生する。比較的冷涼な時期に葉に紫褐色、不整形の病斑を生じて落葉する。バジルに特異的な斑点性病害である。
(6)萎凋病:バジルの施設栽培で発生する。株全体が萎凋し、枯死する。茎地際部〜根部が褐色〜黒色に腐敗、維管束部が褐変する。バジルに特異的な土壌病害である。
(7)葉腐病:シソ科のオレガノ、マジョラムの施設栽培で発生する。葉に褐色、不整形の病斑が拡大、腐敗し、淡褐色の菌糸で葉を綴る。菌糸により隣接株に蔓延する。
(8)立枯病:アブラナ科のルッコラ(ロケットサラダ)の施設栽培で発生する。子葉期から本葉4〜5枚展開期に地際茎部から根部が褐変し、くびれ、萎凋し、枯死する。
2. 野菜類うどんこ病で登録されている4薬剤はスペアミントうどんこ病に対して防除価で69〜81の効果がある(表2)。炭酸水素ナトリウム水溶剤、炭酸水素カリウム水溶剤は薬害、残臭等もなく、実用性がある。一方、イオウ水和剤は薬斑と硫黄臭、炭酸水素ナトリウム・銅水和剤も薬斑を生じるため、収穫期間際の使用は避ける必要がある。

[成果の活用面・留意点]
1. 発生病害の病原が究明されたことにより、適切な防除指導が可能となる。
2. 野菜類うどんこ病の既登録薬剤の使用にあたっては薬剤、栽培品目・品種、時期、圃場毎に薬害や汚れの検討を行う必要がある。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:新病害虫の診断・同定および未解明症状の原因と対策
予算区分:都単
研究期間:1993〜1994、2004〜2005年度
研究担当者:竹内 純、嶋田竜太郎、堀江博道、佐藤幸生(富山県立大)、柿嶌 眞(筑波大)
発表論文等: 堀江ら(1994)関東病虫研報41:153-155.
竹内ら(1995)関東病虫研報42:105-107.

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