トマト黄化葉巻病の幼苗を用いた抵抗性検定法


[要約]
トマト黄化葉巻病の抵抗性検定法は、キャベツで増殖したシルバーリーフコナジラミをTYLCV感染トマトと同一ケージ内に7日間入れ保毒化後に、セル苗を7日間入れて接種し、接種後にLAMP法の検定と病徴観察を行い、抵抗性株を選抜する方法である。

[キーワード]トマト、トマト黄化葉巻ウイルス、接種方法、シルバーリーフコナジラミ、LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification) 法

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・病害虫グループ
[連絡先]電話0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)、野菜
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 トマト黄化葉巻病は、近年、西日本のトマト産地に発生を拡大して大きな被害をもたらしている重要病害であり、防除対策の一つとして抵抗性品種の育成が進められている。幼苗検定により抵抗性個体を確実に選抜するためには、病原のTYLCVを高率に接種する必要がある。そこで、トマト幼苗を高率に感染させる条件を明らかにし、簡便で実用的な接種方法を確立し、簡易かつ高精度なLAMP法によるウイルス濃度測定法と組み合わせた抵抗性検定法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. 大量の苗を高率に感染させるには、1か月間キャベツで飼育・増殖したシルバーリーフコナジラミをTYLCV(マイルド系)感染トマト株とともに同一ケージ(W60cm×D36cm×H50cm)内に7日間置いて獲得吸汁させ保毒化後に、実生のセルトレイ育苗トマト(本葉1葉期)を入れて7日間25℃で育苗接種する方法が簡便である(図1)。
2. 保毒虫率を高めるには、5日以上の獲得吸汁日数が必要である(図2)。
3. 感染率を高めるためには、25℃、7日間の接種期間が必要である(データ省略)。
4. LAMP(Loop-mediated Isothermal Amplification)法により、濁度0.1に達する時間を測定することでウイルス濃度が推測でき、そのウイルス濃度は、抵抗性程度と相関する(図3)。
5. LAMP法検定後に20日間程度育苗し、病徴が見られず、罹病性品種よりウイルス濃度の低い株を選抜することで、抵抗性の株が選抜できる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 一度に大量の苗にTYLCVを抵抗性検定する必要がある場合、この接種方法が有効である。
2. キャベツでシルバーリーフコナジラミを累代飼育する場合、20日ごろに蛹数が多くなることから、この時期に新しいキャベツに交換するとよい。
3. 獲得吸汁から接種後の管理までは、25℃定温でシルバーリーフコナジラミが出入りできない隔離施設内で行い、接種後の保毒虫は有効な殺虫剤(フラニコチニル系殺虫剤またはネオニコチノイド系殺虫剤)で確実に死滅させ、ケージや定温器から散逸させないようにする。
4. トマトセル苗への接種期間中は伝染源のトマト、増殖に用いたキャベツは立毛状態のままでよい。


[具体的データ]



[その他]
研究課題名:LAMP法と黄化葉巻病常発地を活用した抵抗性トマト選抜法
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2005年度
研究担当者:穴井尚子、中坊昌也、加藤政司、福田至朗、深谷雅博、大矢俊夫、矢部和則
発表論文等:穴井ら(2005) 関西病虫研報47:99-101

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