イネ種子からのもみ枯細菌病菌及び褐条病菌の効率的な生菌回収法


[要約]
イネ種子100gを250ml水中で超音波処理し、メンブレンフィルター法で集菌し、再度フィルターを10ml水中に浸漬して超音波処理を行う。この処理液をもみ枯細菌病菌及び褐条病菌の選択培地で培養することで、比較的大量の種子から両病原細菌の検出及び分離が可能となる。

[キーワード]イネもみ枯細菌病、イネ褐条病、種子、メンブレンフィルター法、選択培地

[担当]千葉農総研・生産環境部・病理研究室
[連絡先]電話043-291-9991
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(病害)
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 イネの育苗期に発生する種子伝染性細菌病が問題となっている。また、もみ枯細菌病や褐条病では薬剤耐性菌の発生が確認されている。種子の汚染状況や耐性菌の有無を把握することは、優良種子の生産及び安定供給を図り、適切な防除指導を行っていく上できわめて重要である。特に薬剤耐性を検定するためには生菌を回収することが必要である。そこで、保菌率が低いと考えられる流通種子から、メンブレンフィルター法を改良したイネもみ枯細菌病菌と褐条病菌の同時検出を試みる。

[成果の内容・特徴]
1. 種子(乾もみ)100g(3,500粒相当量)を250mlの滅菌水中に入れて超音波洗浄機で10分間処理し、処理液をメンブレンフィルター法(小原・畔上,2002)により集菌する。このフィルターを試験管内の10ml滅菌水中に回収し、再び超音波洗浄機で5分間処理する。試料液の100〜200μlを選択培地上に塗抹、培養することで、病原細菌を検出、回収できる。(図1
2. もみ枯細菌病菌Burkholderia glumaeの選択培地にはCCNT培地(Kawaradani et al.,2000)を用い、40℃で培養2〜4日後に乳白〜淡黄白色のコロニーで周囲の培地が緑黄色に染まったものを釣菌する(図2)。
3. 褐条病菌Acidovorax avenae subsp. avenaeにはスイカ果実汚斑細菌病菌A. avenae subsp. citrulliの選択培地であるAacSM培地(白川ら,2000)を準用する。40℃で培養5〜8日後に淡色の周辺部をもつ褐緑〜緑色を帯びたコロニーを候補として釣菌する(図3)。コロニーの形状が一定ではないため、回収した細菌を簡易同定96-MUC(西山ら,2001)などで同定するとともに、病原性を確認する。
4. 以上の方法は、少量の種子を乳鉢内で磨砕して試料液を作成する従来の方法(磨砕法)に比べて簡便であり、大容量の種子から試料液を作成するため、一度の試行における検出頻度が高まり、保菌率の低い種子から細菌を回収できる(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本法によって、種子のイネもみ枯細菌病菌及び褐条病菌による汚染の実態を把握できる。回収した生菌により、薬剤耐性菌検定を行うことができる。


[具体的データ]




[その他]
研究課題名:イネ苗立枯性細菌病薬剤耐性菌の発生と防除
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:大谷 徹・竹内妙子

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