植生図情報によるカラス営巣密度の推定法


[要約]
カラス類2種合計の営巣密度は、植生図から計測した樹林と他の5つの土地利用区分との隣接長および畑地の面積率によって、2種の比率は樹林面積率によって高い精度で予測できる。

[キーワード]鳥獣害、密度推定、個体群管理、ハシボソガラス、ハシブトガラス、樹林

[担当]中央農研・耕地環境部・鳥獣害研究室
[連絡先]電話029-838-8825
[区分]関東東海北陸農業・関東東海・病害虫(虫害)、共通基盤・病害虫(虫害)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 鳥類による農作物被害ではカラス類によるものが面積、量ともに最大である。カラス類による被害は加害作物や時期が多岐にわたるため、個別の防除対策に加えて長期的には個体数を抑制する個体群管理が望まれる。そのための基礎情報として、野外における営巣密度を推定する手法を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. カラス類2種(ハシボソガラスとハシブトガラス)合計の営巣密度を、2万5千分の1植生図から計測した樹林と他の5つの土地利用区分(畑地、水田、果樹園、草地および市街地)との隣接長および畑地の面積率によって、2km四方を単位として予測する式は83%の予測精度を持つ(図1表1のモデル1)。
2. カラス類2種の比率(2種合計のつがい数に対するハシブトガラスつがい数の割合)を樹林の面積率によって予測する式は77%の予測精度を持つ(表1のモデル2)。
3. 上記2種類の予測モデルを組み合わせることで、2種の営巣密度を個別に予測することも可能である(図2)。
4. 本予測式により、カラス類の営巣密度分布の広域的な推定を行い、結果を密度分布予測図として地図化できる(図3)。

[成果の活用面・留意点]
1. この手法で作成したカラス類の広域的な密度分布予測図は、被害対策の基礎資料として活用できる。
2. 2万5千分の1以外の図化精度にもとづく植生図を使用する場合は、予測式の係数などを再調整することが必要となる。
3. 本予測式の適用可能範囲は関東平野北部の農業地帯である。他の地域において適用する場合、予測式の係数などについて検証する必要がある。特に地形、植生、土地利用が大きく異なる地域での適用には注意が必要である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:有害鳥の生息密度予測手法とその地図化技術の開発
課題ID:03-05-05-02-07-05
予算区分:交付金
研究期間:2005年度
研究担当者:百瀬浩、吉田保志子、山口恭弘

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