低アミロースの水稲新品種候補「越南190号」の育成


[要約]
「越南190号」は寒冷地南部では中生の早に属し、「ミルキークイーン」より倒伏に強く多収の低アミロース系統である。米飯は粘りが強く、冷めても柔かさが維持され良食味である。また、食味の劣る米にブレンドすることで、その食味を向上させることができる。

[キーワード]イネ、低アミロース、多収

[担当]福井農試・作物育種部・育種研究グル−プ
[連絡先]電話 0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物、作物・稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 低アミロース品種である「ミルキークイーン」は、その米飯が極めて柔かく、粘りが強く、良食味である。また、加工米飯、おにぎり、米菓等の各種用途に適するほか、食味の劣る米にブレンドすることで、その食味を向上させる利用法もある。しかし、同品種は「コシヒカリ」並に長稈で倒伏しやすく、栽培しにくい欠点を持っている。このため、「ミルキークイーン」の優れた食味特性を残しながら、その栽培特性の改良を図った。

[成果の内容・特徴]
1. 「越南190号」は、1993年に晩生、多収、強稈の「越南148号」を母とし、低アミロースで中生の「関東168号」(後の「ミルキークイーン」)を父として福井県農業試験場 で人工交配を行った組合せ後代から育成された低アミロース系統である。
2. 出穂期、成熟期は「コシヒカリ」とほぼ同じで、育成地では中生の早に属する(表1)。
3. 稈長は「コシヒカリ」より10cm程度低い。穂長は「コシヒカリ」よりやや短く、穂数は同程度の中間型である。耐倒伏性は「コシヒカリ」、「ミルキークイーン」より強い、“中” である(表1)。
4. 収量性は「コシヒカリ」、「ミルキークイーン」に比べ高い(表1)。
5. いもち病真性抵抗性遺伝子型はPita-2と推定され、葉いもち、穂いもち圃場抵抗性は共に“やや弱”である。白葉枯病抵抗性は“中”、穂発芽性は“難”、障害型耐冷性は“やや弱  ”である(表1)。
6. 玄米の白濁度は「ミルキークイーン」と同程度で、白米のアミロース含量は「コシヒカリ」のほぼ半分で、「ミルキークイーン」と同程度である(表1)。
7. 米飯は柔かく、粘りが強く良好である。特に冷飯の食味では、「コシヒカリ」よりも優れる。食味の劣る米にブレンドすることで、その食味を向上させることができる(図1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 適応地域は北陸・関東以西の地域である。
2. 鳥取県で栽培予定。
3. 変異菌が出現するといもち病に侵されるので、その発生に注意し、発病を認めたら適期に防除を行う。
4. 耐冷性がやや弱いので、冷害の発生が見込まれる地帯での栽培は行わない。
5. 耐倒伏性は「中」程度なので、多肥栽培は避ける。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:寒冷地南部向け極良食味、高品質および多収品種の育成
予算区分:指定試験
研究期間:1993〜2005年度
研究担当者:冨田桂、堀内久満、寺田和弘、神田謹爾、田野井真、小林麻子、田中勲、見延敏幸、古田秀雄、山本明志、篠山治恵、
      青木研一、正木伸武、南忠員、杉本明夫、鹿子嶋力、堀内謙一

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