カレー用調理米飯向き新品種候補系統「北陸149号」


[要約]
「北陸149号」は寒冷地南部では中生の早に属する細長粒の粳種で、短稈、穂重型の系統である。炊飯米は、表面の粘りは少ないが、内部は「コシヒカリ」並に軟らかいという米飯物性を示す。日本で市販されているとろみのあるカレールウと良く合い、カレー用調理米飯としての用途が期待される。

[キーワード]イネ、調理用米、カレー

[担当]中央農研・北陸地域基盤研究部・稲育種研究室
[連絡先]電話025-526-3239
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物、作物・稲
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 大量に消費されているカレーライスに適した品種を育成し、調理米飯製品として、米の消費拡大を図る。日本型品種は、粘りがあり、軟らかく、日本人の嗜好性が高いが、表面の付着性が強いため米飯とカレーとの混合性が悪い。一方、印度型品種は表面の付着性は低いが、硬いため、我が国の消費者の受容性が低い。日印交配により、両者の長所を兼ね備えた、とろみのあるカレールウにあう米飯物性を持つ水稲品種を育成する。

[成果の内容・特徴]
1. 「北陸149号」は、カレーのルウになじみやすく、日本人の嗜好にあった調理米飯用品種の育成を目的とし、印度型品種「密陽23号」と日本型品種「アキヒカリ」の交配により育成された。米が軟らかく、表層の粘りの少ない系統を官能評価により選抜し、機器による米飯物性の評価を行い、さらに、カレールウへの適性を確認した。
2. カレールウを白飯にかけた際、「コシヒカリ」および「サリークィーン」よりも食味の評価が高く、カレールウに良く合う(表1図1)。
3. テンシプレッサーでの低圧および高圧による物性測定では、「コシヒカリ」より、表層の硬さは硬く、粘りおよび付着性は少なく、全体の硬さおよび粘りは「コシヒカリ」と同等であり(表2)、表面の粘りは少ないが、内部は「コシヒカリ」並に軟らかい米飯物性を持つ。
4. 出穂期は「コシヒカリ」より4〜5日程度早く、育成地では"中生の早"、成熟期は5〜9日程度早い"中生の早"に属する粳種である(表3)。
5. 稈長は"短"、穂長は"やや長"、穂数は"少"、草型は"穂重型"で、脱粒性は"難"、耐倒伏性は"強"である(表3)。
6. 千粒重は「コシヒカリ」より2g程軽く、収量は、多肥では、「コシヒカリ」、「キヌヒカリ」並で、標肥では、これらの品種よりやや少ない(表3)。
7. 穂発芽性は"やや易"、障害型耐冷性は"極弱"である。縞葉枯病に対して抵抗性で、白葉枯病耐病性は"やや弱"である。

[成果の活用面・留意点]
1. カレーライス等に好適な調理米飯製品の開発により、米の消費拡大に繋がる。
2. 「コシヒカリ」と同等の熟期で、同様な作付が可能である。栽培適応地域は、東北南部、北陸および関東以西の冷害常襲地を除く地域である。
3. 障害型冷害への耐冷性が極弱のため、冷害の危険のある地域での栽培は避ける。
4. Pia とPib のいもち病真性抵抗性遺伝子を持つため、現在のところ、いもち病の発病は認められないが、新レースの出現による発病の可能性があるため、発病が認められた場合、直ちに防除を行う。
5. 玄米が細いため、収穫した玄米の選別の際に、篩目の幅に留意する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:寒冷地向き低アミロースを主体とした新形質米品種の育成
課題ID:03-12-01-01-08-05
予算区分:ブランドニッポン5系、重点研究強化費、21世紀プロ5系、次世代稲作、新形質米、超多収
研究期間:1979〜2005年度
研究担当者: 三浦清之、笹原英樹、後藤明俊、重宗明子、上原泰樹、小林 陽、古賀義昭、内山田博士、佐本四郎、藤田米一、太田久稔、清水博之、石坂昇助、山田利昭、中川原捷洋、奥野員敏、小牧有三、堀内久満、福井清美、丸山清明、大槻 寛

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