深耕による根域拡大とコシヒカリの収量品質の向上


[要約]
福井県内の水田の作土深が浅くなってきている。深耕(15cm)で根域拡大することにより、下層根率が高くなり収量品質が向上する。

[キーワード]耕深、下層根、収量、品質、コシヒカリ

[担当]福井農試・作物・育種部・作物研究グループ
[連絡先]電話0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・水田畑作物
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 圃場の浅耕化による根域の減少は、登熟期間の根の活力および玄米収量や品質へも影響することが考えられる。現在耕深は15cmとすることが指導されているが、その効果について明瞭なデータはなく、未解明な点があるために農家の取り組みも少ないと考えられる。このため耕耘の実態を調査するとともに深耕の効果を把握する。

[成果の内容・特徴]
1. 県内水田の作土深の変化
 約30年前と比較すると奥越および二州地域を除き、いずれの地域も作土の浅耕化が顕著である(図1)。作土の浅耕化は乾田化に伴う鋤き床層のち密化と耕耘作業の粗放化によるものと推察される。
2. 根の形態
 深耕すると根域が拡大するため下層部分の根が多くなり(図2)、下層根重(表層から10cm以下の根の乾物重)およびその割合が高まる(図3)。
3. 収量
 深耕による根域拡大は穂数、全籾数を増加させ、収量を向上させる。(表1)。
4. 品質
 深耕による根域拡大は背白・基白粒、茶米、奇形粒、心白粒を減少させ、完全米率を向上させる(図4)。なお、耕深の違いによる玄米窒素濃度への影響は小さい(表1)。

[成果の活用面・留意点]
1. 試験は地力の低い乾田タイプの土壌においてコシヒカリを用い、現地慣行施肥量で行った。
2. 肥沃な土壌で深耕し、コシヒカリを栽培すると倒伏する危険があるので、施肥量に留意する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:水稲根群活力維持のための生育前歴条件の解明と栽培管理方法の開発
予算区分:委託プロ(気候温暖化)
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:山口泰弘、北倉芳忠

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