露地野菜栽培における家畜ふん堆肥中リン酸、カリの有効活用


[要約]
家畜ふん堆肥を露地野菜栽培で連用すると、通常化学肥料で施用するリン酸、またはカリの施用量を、堆肥の成分で代替でき、リン酸、カリの化学肥料削減が可能である。ただし、窒素が不足するので、必ず不足量を単肥の化学肥料で施用する。

[キーワード]家畜ふん堆肥、リン酸、カリ、化学肥料削減

[担当]新潟農総研・園芸研究センター・環境科
[連絡先]電話0254-27-5555
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
 土壌の物理性改善、地力向上、生物性の活性化を主たる目的として、家畜ふん堆肥を積極的に施用するよう指導してきた。しかし、家畜ふん堆肥は、リン酸やカリ含量が高いにもかかわらず、これらの過剰蓄積、塩類障害などの危険について十分考慮されてこなかった。そこで、家畜ふん堆肥中の肥料成分を考慮した、適正な施用方法と効果を示す。

[成果の内容・特徴]
1. 露地野菜栽培において、堆肥に多量に含まれるリン酸とカリを考慮して、堆肥の施用量を設定する(表1)。このとき、堆肥中成分含有率をもとに、慣行施肥成分量を基準としてリン酸は2倍以内、カリは過剰が1kg/10a以内に収まるよう投入量を決定する。不足する窒素とカリは化学肥料の単肥で調整する。特に、窒素は有効成分(培養無機態窒素)が通常かなり少ないので、不足量を必ず化学肥料で施用する。
2. 1の施肥方法により露地野菜を栽培すると、家畜ふん堆肥由来のリン酸、カリは、化学肥 料のみで栽培した場合と同様に作物に吸収、利用されるため、同等の収量を確保することが可能である(図1表2)。
3. 堆肥の連続施用により、土壌中炭素(有機物)の消耗を防止できる。豚ぷん、鶏ふん堆肥では、リン酸の蓄積が進む傾向がみられるので、定期的に土壌分析を行い、それに基づいて堆肥の施用方法(堆肥種類、施用量)を検討する(図2)。
4. これにより、不必要な化学肥料の投入を抑制し、リン酸、カリの過剰蓄積を軽減できる。

[成果の活用面・留意点]
1. 平成14年秋作から16年秋作まで、同一ほ場(褐色低地土)での家畜ふん堆肥の連続施用による主要露地野菜、連続5作の栽培試験の結果である。
2. 家畜ふん堆肥の培養無機態窒素は、インキュベーション試験(ここでは30℃、8週間とした)により求める。
3. 家畜ふん堆肥の成分は、畜種、作成方法、腐熟期間などにより一定ではないので、特性、成分含有量を十分に把握し、作物の生育を阻害しない良質のものを使用する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:家畜ふん尿堆肥成分簡易測定技術の開発
予算区分:国委
研究期間:2002〜2004年度
研究担当者:竹田宏行(新潟園研セ)
発表論文等:竹田(2005)「農林水産バイオリサイクル研究」成果(中央農研刊):42-44

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