ケイ酸石灰施用による代かき濁水由来の水質汚濁の低減


[要約]
ケイ酸石灰200kg/10a程度を施用してから2週間以内に代かきをすることで、ECが上昇して懸濁物質(SS)の沈降が早まり、代かき時に発生する懸濁物質のほ場からの排出を抑制し、水質汚濁を低減できる。

[キーワード]水田、水質汚濁、ケイ酸石灰、懸濁物質、SS、代かき

[担当]富山農技セ・農業試験場・土壌肥料課
[連絡先]電話076-429-5248
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境、共通基盤・土壌肥料
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
 水田からの栄養塩類の流出は、砂質浅耕土地域においても懸濁態での流出が多い。代かき時まで施肥を行わない側条施肥では、施肥成分による土壌コロイド粒子の凝析が期待できず、栄養塩類を含んだ懸濁物質の流亡が増加すると考えられる。懸濁物質の流亡を低減できる節水代かき技術は、「いつき」の生じやすい輪換利用体系下の砂質浅耕土では適用が困難である上、近年は有効態ケイ酸が減少傾向にあり、ケイ酸資材の施用を推進している。そこで、ケイ酸石灰の施用に懸濁物質の凝集を促進し、水質汚濁を低減する技術の開発を行う。

[成果の内容・特徴]
1. 田面水中の懸濁物質(以降SSと表記)濃度は代かき直後に急激に増加するが、水田からの排水は田面水位の調節が必要な代かきや移植の直前に行われるため、排水中のSS濃度は移植直前の排水時がもっとも高くなる(図1)。なお、入水から移植までの期間のSS及び窒素の排出量は、9.2kg/10a、0.45kgN/10a程度である。
2. 田面水が乱されないために、ほ場条件よりもSSの沈降速度が速くなる室内試験条件において、ケイ酸石灰の添加量が多いほど土壌懸濁液の電気伝導度(EC≒塩類濃度)は高くなり、また添加した後、緩やかに上昇を続けて、3日目以降に最大に達する(図2)。
3. 肥料や資材を添加すると無添加に比べてSS濃度は低くなり、無添加に対するSS濃度の割合は、電気伝導度の変化と同様に、ケイ酸石灰では3日後まで低下をし続ける(図2)。
4. ケイ酸石灰を施用してからの植代までの日数と田面水中のSS濃度との関係を指数関数で近似し、図4の式を得て試算すると、ケイ酸石灰を施用してから2週間以内に耕起から植代まで行うことで、田面水中のSS濃度を80%以下に低減できる(図4)。

[成果の活用面・留意点]
1. 基肥を全層施肥で行っていないほ場で活用する。
2. 粘土含有量が約10%の礫質灰色低地土ほ場の結果である。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:懸濁物質の凝集による田面排水に由来する栄養塩類の流出抑制技術の開発
予算区分:国補(指定試験事業)
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:大野智史、八木麻子、田村美佳

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