Pythium oligandrum MMR2株によるイネもみ枯細菌病および苗立枯細菌病の発病抑制効果


[要約]
保菌種子を浸種開始と同時に3日間、105個/mlの濃度に調整したPythium oligandrum MMR2株の卵胞子懸濁液に浸漬処理することにより、イネ育苗期のもみ枯細菌病、苗立枯細菌病の発病が抑制される。

[キーワード]Pythium oligandrum、イネ、もみ枯細菌病、苗立枯細菌病、種子消毒、生物防除

[担当]新潟農総研・作物研・栽培科、新潟農総研・基盤研究部
[連絡先]電話0258-35-0047
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 水稲の育苗期に発生する細菌性病害の防除には化学合成農薬による種子消毒が行われているが、薬剤耐性菌の発生や種子消毒廃液の処理の問題等から、拮抗微生物を利用した生物防除が注目されている。そこで、広範囲の病害防除への利用が期待される拮抗微生物(Pythium oligandrum)について、細菌性病害における利用の可能性を明らかにする

[成果の内容・特徴]
1. 保菌種子を浸種開始と同時に、Pythium oligandrum MMR2株(以下、POと略す)の卵胞子懸濁液(105個/ml)に15℃で3日間浸漬処理すると、もみ枯細菌病の発病抑制効果が最も高い(図1図2)。
2. POの加圧滅菌(121℃、15分)した菌体や培養濾液による発病抑制効果は認められず、生菌体のみで効果が認められる(データ略)。
3. 同様の浸漬処理により、苗立枯細菌病ではもみ枯細菌病と同程度の発病抑制効果が認められるが、褐条病では効果が認められない(図3)。
4. POのイネに対する病原性および生育への影響は認められない。

[成果の活用面・留意点]
1. PO MMR2は北海道農業研究センターが分離した菌株である。
2. POの細菌病に対する効果が確認されたのは、本報告が初めてである。
3. POはV8液体培地で25℃、3週間静置培養し、ろ過集菌後、磨砕した菌体(卵胞子懸濁液)を用いる。卵胞子懸濁液は冷蔵庫に保管し、使用直前に卵胞子濃度を調整する。
4. 本菌は生物防除資材として研究途中であり、実用化段階に至っていない。
5. 保菌種子中の病原細菌密度が高い場合には、発病抑制効果が劣ることがある。
6. POの作用機作については未解明のため今後検討を要する。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:生物的・耕種的手法を利用した病害発生制御技術の開発
予算区分:県単特別
研究期間:2004~2008年度
研究担当者:堀 武志、前田征之、黒田智久、石川浩司、竹中重仁(北海道農研)

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