水田の汎用化に伴う土壌変化


[要約]
水田土壌は、水田の汎用化に伴い乾田化が進み、pHは低下し、次表層のち密度は増加している。しかし、稲わらや転作作物の残渣を鋤きこむことにより、全窒素量および全炭素量は維持できる。

[キーワード]乾田化、pH、ち密度、全窒素量、全炭素量

[担当]福井農試・生産環境部・土壌・環境研究グループ
[連絡先]電話0776-54-5100
[区分]関東東海北陸農業・北陸・生産環境
[分類]科学・参考

[背景・ねらい]
 近年の大麦、大豆などの転作作物の生育不良や収量低下および、水稲の収量低下の原因として、転作に伴う地力の低下などが懸念されている。
 作物の生産性および、品質の向上を図るために、土壌状態を把握することは重要である。本県では1979年から5年の間隔で同一ほ場を調査しており、現在は6巡目に入っている。そこで今回は、転作が推進され始めた昭和50年代頃から行われている定点調査(1979〜2003年:1巡目〜5巡目)における水田土壌のデータおよびアンケート結果をまとめ、過去25年間の水田土壌の変化を比較し、今後の土作り、施肥管理対策の参考とする。

[成果の内容・特徴]
1. 汎用化水田や大麦、大豆などの転作作物の作付が増加した(5巡目: 1999〜2003年では調査地点の半数で転作が取り入れられた)ことにより、乾田化が進んでいる (図1)。
2. 乾田化が進み、さらに、土づくり肥料の施用が少なくなっていることにより、pHが低下している (図2図3)。特に、畑作物を栽培する際には、土作り肥料を用いて、土壌のpHを適性にする必要がある、
3. ち密度は、作土層では明確な傾向はみられないが、機械化の圧密により、次表層は密になっている(図4)。
4. 一般に、乾田化によって窒素量が減少するといわれているが、今回の結果では、全窒素量は減少しておらず、本調査地点では、毎年7割以上の地点で、稲わらや転作作物の残渣などの有機物を土壌へ還元しており、このことによって土壌中の窒素量が維持されていると考えられる(図5)。
5. 全炭素量は、全窒素量と同様に、有機物が土壌へ戻されることにより、維持されていると考えられ、今後も稲わらなどの有機物を積極的に土壌に還元することが必要である(図6)。

[成果の活用面・留意点]
1. 本成果は、今後の水田土壌の土作りおよび施肥管理対策の参考となる。
2. 本成果に用いたデータは、定点調査において継続して調査している67地点の水田を対象にした。
3. 土壌タイプは、ほぼ全層がグライ層の土壌を湿田、地表下50cm以内にグライ層が出現する土壌を半湿田、地表下50cm以深にグライ層が出現、もしくはグライ層なしの土壌を乾田と区分した。
4. 各折線グラフは、経年の土壌タイプの変動にかかわらず、1巡目の土壌タイプで区分したグループの変化を示した。


[具体的データ]


[その他]
研究課題名:土壌環境基礎調査、土壌機能実態モニタリング調査
予算区分:国補
研究期間:1979〜1998、1999〜2003年度
研究担当者:神田美奈子、野上雅弘、小谷佳史、水澤靖弥、松田隆一、平井

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