耕うん同時畝立て播種作業機の汎用利用によるムギ・ソバの湿害軽減技術


[要約]
ダイズ用に開発した耕うん同時畝立て播種作業機の耕うん爪配列を変更し、平高畝を作りながら同時にムギやソバを播種する作業技術である。一工程で耕うんと同時に畝立て、施肥、播種作業を行い、畝立てにより湿害を軽減できるため、ムギやソバの収量が増加する。

[キーワード]ムギ、ソバ、耕うん同時畝立て、湿害軽減

[担当]中央農研・北陸水田輪作研究チーム
[代表連絡先]電話:025-526-3236
[区分]共通基盤・総合研究(輪作)、共通基盤・作業技術、関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・普及

[背景・ねらい]
  北陸地域等の低湿で重粘な土壌におけるダイズを対象として、耕うんと同時に畝立て、施肥、播種を行う作業機で、湿害を軽減して収量を増加させる技術を開発した(H15成果情報)。一方、ムギやソバにおいても湿害を受けると収量が減少するため、部分的に排水溝を作る栽培方法が行われているが、更に効率的で安定収量を得る技術開発が必要である。そこで、ダイズ用に開発した耕うん同時畝立て作業機を汎用的に利用し、湿害を軽減して収量を増加させる技術を開発する。

[成果の内容・特徴]
1. ダイズ用に開発した耕うん同時畝立て播種作業機(ホルダー型アップカットロータリ)の、耕うん幅170cm、220cmの作業機で、それぞれ2畝と3畝を作る爪配列を、両端の爪(耕うん幅約30cm)を内向きにする爪配列に変更することにより、畝高さ約10cmの1つの平高畝を作ることができる(図1)。作業機の後方に施肥播種機を取付けているため、耕うんと同時に畝立てと施肥・播種を一工程で行うことができる(図2)。耕うん幅170cmの作業機では、畝上面幅120〜130cmで5条(条間約27.5cm)、耕うん幅220cmの作業機では、畝上面幅175〜180cmで8条(条間約25cm)を播種することができる。
2. ムギ平高畝栽培時の土壌水分(深さ約5cm)は、慣行に比べて低下し、特に降雨時の土壌水分の上昇が抑えられる。特に溝に近いところで低下の程度が大きくなる(図3)。
3. ソバの収量は、北陸研究センターと新潟県、長野県の現地で実施した試験では、16ヶ所の圃場の内、糸魚川市、南魚沼市、松本市、十日町市、北陸研究センターの一部等10ヶ所で増加が認められる(図4左)。
4. ムギの収量は、試験を実施した長岡市、松本市、上田市の圃場とも耕うん同時畝立て栽培で増加し(図4右)、パン用コムギ(ユメアサヒ)では蛋白含量が1%程度増加する。
5. 現地実証収量から、ソバで現地実証圃場平均で約20kg/10a(坪刈り調査による増加収量平均の50%と仮定)の増収が見込まれ、かつ玄ソバ価格を340円/kgとすると6,800円/10aの収益増となる。ソバ用に本作業機(170cm幅:耐用年数5年)を播種機込み(総合計額約100万円)で導入する場合、導入費用を回収する面積は約2.6haである。

[成果の活用面・留意点]
1. 排水が不良で、湿害が発生しやすい地域のムギ、ソバ栽培で効果が期待できる。
2. 作業能率は、170cmの作業機で約1ha/日である。
3. 作業機は、2006年5月に(株)松山から販売されており、新潟県、長野県で導入されている。


[具体的データ]

図1 耕うん同時畝立て用ロータリの爪配列
図2 耕うん同時畝立て播種作業機
図3 ムギ栽培時の土壌水分(松本市)
図4 ソバ、ムギの坪刈り収量

[その他]
研究課題名:北陸地域における高生産性水田輪作システムの確立
課題ID:211-k
予算区分:基盤、受託(上越市)
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:細川  寿、片山勝之、細野達夫、塩谷幸治、大嶺政朗

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