排水路の魚類相を改善する魚道等を用いた水域ネットワークの再生


[要約]
改修により水深が浅く流れが速くなり段差が生じた排水路は、魚道と転倒堰の設置により水域ネットワークが再生され、魚類生息数が増加する。

[キーワード]魚道、転倒堰、魚類、排水路、水域ネットワーク

[担当]愛知農総試・環境基盤研究部・環境安全グループ、農業工学グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・作業技術
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  改修された排水路は段差等により河川、排水路、水田のネットワークが分断され、水田周辺魚類の生息場所としての機能が低下している。水田周辺魚類は水田依存種、一時的な水田利用種、河川・水路間往復種など、水域利用形態が種毎に異なる。これら魚類の生息環境の改善には、分断された水域ネットワークを再生し、それぞれの種の生活史を保障することが必要である。そこで、大規模改修が不要で簡易に設置できる魚道と転倒堰を用いた水域ネットワークの再生効果を検証する。

[成果の内容・特徴]
1. 落差工と取水堰による落差、排水路と水田間の段差、浅水域の形成により水域ネットワークが分断された現地実証地の排水路は、魚道と転倒堰を設置すると(図1)、水域ネットワークが機能し、1〜2年の短期間に魚類相が改善される(図2)。
2. 魚道は各水域間を魚類が移動できるよう、落差及び段差部に設置する。魚道への通水量は概ね100〜500ml/sを確保する。設置勾配は20°以下とする。また、魚道内の流れの調整は隔壁の回転により行なう(図1)。
3. 転倒堰は、水深が浅く流れが速いため、魚類の遡上に支障がある区間に設置する(図1)。設定水位は生息魚が遊泳できるよう考慮する。
4. 遡上魚は、河川と排水路間が6種300個体、排水路内の落差部が8種698個体、排水路と水田間が5種440個体であった(図3)。本魚道は小さなメダカから全長15cmのオイカワまで遡上できる。
5. タモロコは5〜7月に排水路内を活発に移動し(図3)、水田を繁殖と成育の場所として利用する(表1)。また、メダカも水田で繁殖する(表1)。オイカワは河川から排水路に盛んに遡上するが、水田へ遡上しない(図3)。
6. 水域ネットワーク再生により、排水路では水田に依存するメダカと河川・排水路を往復するオイカワが新たに生息するようになる。さらに、河川や排水路を主な生息場所とし一時的に水田を利用するタモロコの個体数も増加する(図2)。

[成果の活用面・留意点]
1. 水域ネットワークを効果的に再生するには、設置前後の魚類相を把握し、魚道と転倒堰を配置する必要がある。
2. 魚道と転倒堰の構造、製作等については、関東東海北陸農業研究成果情報 平成16年度Ⅰ「遡上効果が高く、施工が容易で安価な魚道」・17年度Ⅰ「魚類の生息環境を改善する魚道付き転倒堰」を参照。


[具体的データ]

図1 現地実証地の水系図(上)と排水路の縦断図(下)
図2 排水路の魚類生息状況 図3 各水域の魚道を遡上した主な魚類の個体数推移
表1 水田を遡上・降下した主な魚類

[その他]
研究課題名:自然再生のための住民参加型生物保全水利施設管理システムの開発
予算区分:高度化事業
研究期間:2003〜2006年度
研究担当者:田中雄一、渡部勉、宮本晃

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