黒毛和種去勢牛の短期肥育における前期粗飼料水準が発育および肉質に及ぼす影響


[要約]
黒毛和種の短期肥育において、肥育前期にCPが高く、β−カロテンを多く含む粗飼料を多給した区は、濃厚飼料を多給した区と比べて、肥育中期、後期での飼料摂取量及び増体に優れる。また、枝肉成績でも粗飼料多給区の方が、枝肉重量、ロース芯面積、BMS No.において優れる傾向にある。

[キーワード]粗飼料多給、飼料摂取量、DG、枝肉成績

[担当]栃木畜試・畜産技術部・肉牛研究室
[代表連絡先]電話:028-677-0302
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  栃木県における黒毛和種去勢牛の平均出荷月齢は、約33ヶ月齢であり、全国的にみても長い傾向にある。そこで、肉牛肥育農家における経営の安定化を図るためには、肥育期間を短縮したうえで、高品質かつ枝肉重量に富む市場ニーズに即した牛肉を生産する技術開発の必要がある。
  特に飼養管理としては、育成期や肥育前期において、CPとβ−カロテンを多く含む粗飼料を給与することにより、肥育期に十分な飼料摂取ができるルーメンや骨格、筋肉の発達を促すことが肥育の効率化を図る上で重要であると考えられる。そこで、本研究においては、黒毛和種去勢牛の肥育期間短縮時における粗飼料給与水準に着目し、肥育前期に乾草を多給することによる高品質牛肉の効率的生産技術について検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 肥育前期(8〜12ヵ月齢)において、DG1.0kgに必要なTDN 110%以上を給与量とし、粗飼料(チモシー)と濃厚飼料の現物重給与割合が40対60の粗飼料多給区と15対85の対照区の2区を設定した。また、肥育中期(13〜22ヵ月齢)及び肥育後期(23〜27ヶ月齢)においては、両区とも同じ給与飼料内容とし、TMRによって飽食給与とした。粗飼料(稲ワラ)と濃厚飼料の現物重給与割合は、肥育中期20対80、肥育後期10対90とした。
  肥育各期終了時の体測値、飼料摂取量および要求量、ならびに枝肉成績を比較した。
2. 飼料摂取量は、前期において差は認められないが、肥育中期及び後期では、粗飼料多給区が対照区に比べて有意に多い(p<0.01)(表1)。体重及びDGは、肥育前期終了時において、粗飼料多給区に比べて対照区で有意に優れている(p<0.01)が、試験終了時には粗飼料多給区が大きくなる傾向を示す(表2)。
3. TDN要求量に有意差は見られないが、肥育前期では対照区において、肥育後期では粗飼料多給区において、低くなる傾向が見られる(表3)。
4. 枝肉成績は、粗飼料多給区において枝肉重量やロース芯面積が大きく、BMS No.においても高くなる傾向にある(表4)。良質な乾草を肥育前期に多給することにより、短期肥育でも高品質牛肉の効率的生産が可能である。

[成果の活用面・留意点]
1. 一般的な子牛の取引月齢は、10ヶ月齢であるが、当試験では8ヶ月齢から試験を開始している。
2. β−カロテンを多く含むチモシー乾草の給与は、肥育前期までの給与とする。


[具体的データ]

表1 乾物飼料摂取量
表2 体測値
表3 TDN要求量
表4 枝肉成績

[その他]
研究課題名:肥育の期間短縮に関する試験
予算区分:県単
研究期間:2004〜2005年度
研究担当者:堀井美那、川田智弘、半田真明

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