黒毛和種雌肥育牛の皮下脂肪の硬軟の指標化


[要約]
黒毛和種雌肥育牛の皮下脂肪の脂肪酸組成と触感は相関をもち、脂肪の硬軟の指標に不飽和または飽和脂肪酸の割合を用いることができる。

[キーワード]脂肪質、脂肪の硬軟、脂肪酸組成、黒毛和種雌肥育牛

[担当]三重科技セ・畜産研究部・大家畜研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  現在の日本食肉格付協会による牛枝肉取引規格では視覚的検査のみのため、脂肪交雑が多く等級の高い牛肉にもかかわらず食感の面で劣るため精肉業者の価格評価が低い場合もあり、客観的に判断する方法が要望されている。そこで、客観的判断のひとつとして、精肉業者が重視する脂肪質の検討を行う。黒毛和種雌肥育牛については例が少ないため、脂肪の硬軟を触感と分析数値で比較し、判断の指標化を試みる。

[成果の内容・特徴]
  県内産の黒毛和種雌肥育牛の脂肪の硬軟について、日本食肉格付協会の肉質等級が5段階になっていることを参考に、触感による硬軟を5段階で評価することを試みた。触感の評価は、同一の3人(本研究担当者)で、格付け用に第6〜第7肋骨間で切開された枝肉の周囲の皮下脂肪を触り、判定は、「非常に硬い」を1、「硬い」を2、「ふつう」を3、「軟らかい」を4、「非常に軟らかい」を5として、3人で評価した結果の平均とした。事前に、200頭以上の枝肉の皮下脂肪を触り、目合わせを行った。
1. と畜からの冷蔵期間(67時間±3時間)および冷蔵室内温度(0.8℃±1.5℃)等の条件がほぼ同じ枝肉(46頭)について、触感による5段階評価を行い、肩部(三角筋中央付近)の皮下脂肪を採材し脂肪酸組成を分析したところ、図1のとおり、人間の触感と不飽和脂肪酸割合は高い相関がある。
2. 触感の5段階評価の各段階における不飽和脂肪酸割合(図1)から、5段階評価(分かりやすくするため整数で区分し、66%未満を1、66%以上〜68%未満を2、68%以上〜70%未満を3、70%以上〜72%未満を4、72%以上を5)したところ、表1のように90%以上一致する。
3. 触感の5段階評価と不飽和脂肪酸割合について判別分析を実施すると、約85%の判別的中率が得られる。(表2

[成果の活用面・留意点]
1. 脂肪酸組成を判断の指標とするためには、脂肪の採材を同じ部位から行う必要がある。
2. 精肉業者により、望ましいとする脂肪の硬軟は異なる。


[具体的データ]

図1  皮下脂肪の硬軟の5段階評価と不飽和脂肪酸割合の関係 表1  触感による5段階評価と不飽和脂肪酸割合による5段階評価との関係(n=46)
表2  触感による5段階評価と不飽和脂肪酸割合の判別分析表(n=46)

[その他]
研究課題名:肉牛の産地間競争力賦与技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:松井靖典、森昌昭、山田陽稔

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