給与飼料中のTDNからの黒毛和種雌肥育牛の体重推移の予測


[要約]
黒毛和種雌肥育牛において、肉用牛飼養標準の体重と期待増体量から必要なTDN給与量を求める式を組み替えて、体重とTDN摂取量から増体量を求めると、実増体量と近似した値が得られ、肥育仕上がり体重も非常に近い値が得られる。この計算式により、肥育開始体重と設定した給与飼料量から、1か月毎の体重と仕上がり体重が予測でき、肥育牛の給与診断や肥育マニュアル作成に利用できる。

[キーワード]黒毛和種、雌肥育牛、TDN、増体、仕上がり体重

[担当]三重科技セ・畜産研究部・大家畜研究課
[代表連絡先]電話:0598-42-2029
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  農家における肥育牛の給与飼料診断においては、農家毎に異なる子牛の導入先と体重や、給与飼料の種類と量を肥育牛の体重変化に反映する必要がある。しかし、肉用牛飼養標準に記載された表中のデータからの読み取りでは、細かく変化する導入体重と給与TDNに対応した体重推移の予測は困難である。
  そこで、肉用牛飼養標準における、体重と期待増体量から必要なTDN給与量を求める式を用いて、体重とTDN給与量から増体量を求め、体重の推移を予測する。

[成果の内容・特徴]
1. 黒毛和種雌肥育牛において、肉用牛飼養標準(1995年版)の体重と期待増体量から必要なTDN給与量を求める式を組み替えると、下記の式が得られる。
   1日当たり増体量(以下DG、kg/日)予測値=(0.0397×体重(kg)^0.75−1.4386×TDN(kg/日))/(0.2699×TDN(kg/日)−0.0754×体重(kg)^0.75)
2. 黒毛和種雌牛の肥育開始体重と、以降4週間における1日当たりの平均TDN摂取量から、計算式により4週間の平均予測DGが求められる。開始体重にその予測DGを28倍(4週間分)したものをプラスして4週後の体重が求められる。それを、肥育終了時の84週まで21回繰り返すことで、肥育仕上がり体重予測値が求められる(表1)。
3. 過去の肥育試験で得られた、黒毛和種雌肥育牛の肥育開始体重と4週毎にまとめた1日当たりのTDN摂取量から計算式により求め、肥育期別にまとめたDGは、肥育前期(肥育開始から24週)、肥育中期(24週から48週)と肥育後期(48週から84週:肥育試験期間終了時)のどの時期においても実測値と近似し、高い相関が得られる。また、24週、48週、84週の体重予測値も実測値に近似する(表2)。
4. 体重の推移は、図1に示すとおり、4週毎の計算で得られた増体の積み上げより得られた予測体重と実測体重では非常によく似た曲線を描く。
5. これらのことから、肥育マニュアル作成時に肥育開始体重と設定した給与飼料量より得られるTDN給与量から、1か月毎の体重と仕上がり体重を予測しても、実用上差し支えないことが分かる。また、農家の給与診断においては、聞き取り(導入子牛の体重、飼料給与量)による増体量の推移および、改善案による増体量の推移について、表やグラフにより明確に提示することが出来る。

[成果の活用面・留意点]
1. 農家への普及指導の際に給与診断ツールとして活用できる。
2. 給与TDN量の計算は、全て日本標準飼料成分表(2001年版)を用いる。


[具体的データ]

表1 エクセルシートにおける計算
表2 増体量の予測値と実測値
表3 体重の実測値と予測値
図1 体重の推移

[その他]
研究課題名:ビタミンA制御による和牛雌牛肥育技術の確立ほか
予算区分:県単
研究期間:1996〜2005年度
研究担当者:山田陽稔、森昌昭、平岡啓司、松井靖典

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