血中アンモニア濃度が低い受胚牛は受胎率が高く流産率も低い


[要約]
受胚牛の血中アンモニア濃度と胚移植成績から、凍結胚移植では血中アンモニア濃度が40μg/dl以下で黄体ランクが「優」の時に受胎率が高く、また、血中アンモニア濃度が低いと流産率も低い。

[キーワード]ウシ、胚移植、血中アンモニア濃度、凍結胚、受胎率、黄体、流産率

[担当]福井畜試・技術開発部・バイテク研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  ウシの胚移植では受胚牛への飼料給与が受胎率に影響し、給与する飼料により血中アンモニア濃度が変化すると報告されているが、受胚牛の血中アンモニア濃度と胚移植成績の関係および流早死産との関係についてはほとんど報告されていない。そこで、野外で胚移植を行なった受胚牛の血中アンモニア濃度と胚移植成績等について調査し、血中アンモニア濃度が受胎率や流早死産率に及ぼす影響について検討する。

[成果の内容・特徴]
  黒毛和種肉用牛より回収した新鮮胚、凍結胚(耐凍剤:10%グリセリン)1、2個をホルスタイン種、交雑種の受胚牛443頭に移植する。血中アンモニア濃度は移植前日(濃厚飼料給与後3時間目以降)までに採血し、微量拡散法(アミチェックメーター)にて測定する。受胚牛の血中アンモニア濃度を3段階(≦30、31〜40、41μg/dl≦)に、また、移植時の黄体検査で黄体の長径により3ランク(1cm>可、1cm≦良<2cm、優≧2cm)に分類する。移植前に黄体発育不全の受胚牛へはhCG(未経産:1500IU、経産:3000IU)を投与する。妊娠鑑定は胚移植後30〜50日に行い、受胎確認後に、発情回帰したもの、流産胎児を確認したもの、および再度妊娠鑑定で不受胎を確認したものを流産とする。
1. 受胚牛の黄体ランクと血中アンモニア濃度には、差がみられない(表1)。
2. 新鮮胚移植を行なった受胚牛の血中アンモニア濃度と受胎率には、一定の傾向はみられない(図1)。
3. 凍結胚移植において、血中アンモニア濃度が30μg/dl以下で黄体ランクが「優」の受胚牛は、血中アンモニア濃度が31μg/dl以上で黄体ランクが「良、可」の受胚牛に比べ、有意に受胎率が高い(図2)。
4. 受胚牛へのhCG投与、未投与による受胎率には差がみられない。
5. 受胚牛の血中アンモニア濃度と流産率は、血中アンモニア濃度が40μg/dl以下の場合に有意に流産率が低くなる(図3)。
6. 受胚牛の血中アンモニア濃度と移植胚(新鮮、凍結)および移植胚数(1胚、2胚)別の流産率には、一定の傾向がみられない。また、受胚牛の血中アンモニア濃度と、早産、死産の発生率の間には、一定の傾向はみられない。

[成果の活用面・留意点]
1. 血中アンモニア濃度は野外で測定が可能であり、その濃度と黄体の大きさによる受胚牛の選定は実用的な方法である。
2. 受胚牛の血中アンモニア濃度が流産発生に関与している可能性が高く、流産の予防には血中アンモニア濃度の測定が有効である。
3. 血中アンモニア濃度が高い受胚牛は、不適切な飼料給与が一因であり、給与飼料中の分解性蛋白質(CPd)と非繊維性炭水化物(NFC)のバランスの改善等が重要である。


[具体的データ]

表1 受胚牛における黄体ランクと血中アンモニア濃度 図3 受胚牛の血中アンモニア濃度別流産率
図1 新鮮杯移植における受胚牛の血中アンモンニア濃度と黄体ランク別受胎率
図2 凍結胚移植における受胚牛の血中アンモニア濃度と黄体ランク別受胎率

[その他]

研究課題名:受精卵移植技術高度定着化確立事業
予算区分:国補
研究期間:2004〜2006年度
研究担当者:笹木教隆


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