乳用牛OPU卵子の輸送には5%CS加199培地と2重ストロ−が有効


[要約]
農家の後継牛づくりの手法として経腟採卵(OPU)を実施し、得られた未成熟卵子を5%CS加199培地と2重ストローで封入し輸送する方法が、無血清培地と試験管で輸送する方法に比べ、移植可能胚が作出できる。

[キーワード]乳用牛、OPU、子牛血清、2重ストロー、輸送

[担当]福井畜試・技術開発部・バイテク研究グループ
[代表連絡先]電話:0776-81-3130
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(大家畜)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  生体卵巣から未成熟卵子を採取する経腟生体卵子吸引法(OPU)が開発され、体外受精により移植可能胚を得ることが可能となっている。そこで、酪農家の優良雌系統から後継牛を得る手法として、野外において未成熟卵子を採取・検卵し、その輸送液、輸送方法および輸送時間の違いと胚盤胞期への発生率を比較検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 酪農家の長期不受胎乳用牛6頭と当場乳用牛2頭を供試し、1週間間隔で延べ31回実施する。OPUには、超音波診断装置(SSD900SE:FHK)、プローブ(コンベックス型7.5MHz:FHK)、採卵針(COVAneedle17G:ミサワ医科工業)、吸引ポンプ(FV4:FHK)を使用し、100mmHgの吸引圧で、1%CS、ヘパリン10IU/mLを添加した乳酸化リンゲル液で卵子を回収する。
2. 輸送液は5%CS加199培地と無血清培地(IVF100培地)、輸送方法は小試験管と2重ストロー(図1;0.25mLストローを外サヤに入れる)とし、当場まで38℃で保温し輸送する。それぞれの胚盤胞期までの発生率を比較すると、5%CS加199培地と2重ストローによる輸送方法が、他に比べ卵子の紛失も無く発生率が高い(表1)。
3. OPU卵子の輸送に90分を要しても、当場の輸送しない場合と比べ、発生率には差がない(表2)。

[成果の活用面・留意点]
1. OPU卵子を5%CS加199培地と二重ストローで輸送することにより、移植可能胚が作出でき、酪農家の優良血統の維持に活用できる。


[具体的データ]

図1 2重ストローの模式図
表1 輸送液および方法の違いによる胚盤胞期までの発生数
表2 輸送時間の違いによる胚盤胞期までの発生数

[その他]
研究課題名:農林水産業者等提案型共同研究事業
予算区分:県単
研究期間:2006年度
研究担当者:谷村英俊、田中  健

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