春機発動後の豚において発育ステージの揃った胚を回収するホルモン処置


[要約]
春機発動後の豚にプロスタグランジンF2α(PGF2α)、PMSGとhCGを組み合わせて投与する方法は、発育ステージの揃った胚の回収が期待できる。

[キーワード]PGF2α、PMSG、hCG、ブタ、胚、発育ステージ

[担当]愛知農総試・畜産研究部・豚グループ
[代表連絡先]電話:0561-62-0085
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(中小家畜)
[分類]研究・参考

[背景・ねらい]
  受精卵移植を行うには、発育ステージの揃った胚を多数用意する必要がある。しかし現在行われている春機発動後の豚に対するホルモン処置法では、個体によって反応が大きく異なるため、回収された胚の発育ステージは思うように揃わず、受精卵移植に必要な数の胚を確保することは困難である。
  そこで、岩村ら(特許第3713531号、平成17年9月2日登録)の技術を応用し、春機発動後の豚において発育ステージの揃った胚を効率的に回収するホルモン処置法を検討する。

[成果の内容・特徴]
1. 発情終了後12日目にPGF2α(ジノプロストとして15mg)を朝夕2回投与し、24時間後にPMSG1500IU、さらに72時間後にhCG500IUを投与する(図1)。hCG投与後定時(24時間後及び40時間後)に人工授精を行い、5日後に胚を回収すると、回収胚のステージは拡張胚盤胞に集中する。(表1
2. 各供試豚毎に回収胚ステージを比較すると、対照区(自然発情)では個体によって回収される胚ステージが様々である。また、各個体内においても比較的広い範囲のステージの胚が回収される。(図2
3. ホルモン処理区では、ほとんどの個体で拡張胚盤胞の割合が非常に高い。(図2

[成果の活用面・留意点]
1. 本法は、目的の発育ステージに揃った胚を効率的に回収することができるため、受精卵移植技術において有用である。
2. 発育ステージの揃った胚は、胚の凍結等の操作あるいは試験においても有用である。
3. PMSGとhCGの投与は、春機発動前の豚に対して発情誘起及び排卵の斉一化を目的に利用されているが、春機発動後の豚に対してはPMSGとhCGのみの投与では、本試験のような胚発育ステージの斉一化の効果は得られない。


[具体的データ]

図1 ホルモン処理及び人工授精(AI)の方法
表1 回収胚の発育ステージ
図2 各供試豚における回収胚の発育ステージ分布

[その他]
研究課題名:豚の繁殖技術の高度化
予算区分:単県
研究期間:2002〜2006年度
研究担当者:柴田貴子、田島茂行、安藤康紀
発表論文等:柴田ら(2006)愛知農総試研報 38:161−166

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