腐熟程度からみた堆肥の評価法とその応用


[要約]
いわゆる「家畜排せつ物法」の完全施行後においては、腐熟の指標である炭素含量と肥料成分等との間には負の関係が認められる。この関係を利用すると、腐熟のどの段階で利用することが有利か、特殊肥料の重金属表示義務の回避が可能な腐熟程度の把握、「家畜排せつ物法」の適正管理の有無等の情報を得ることができる。

[キーワード]家畜ふん、堆肥、腐熟、肥料成分、重金属、家畜排せつ物法

[担当]群馬畜試・資源循環研究グル−プ
[代表連絡先]電話:027-288-2222
[区分]関東東海北陸農業・畜産草地(畜産環境)
[分類]技術・参考

[背景・ねらい]
  家畜ふん堆肥には、ふんが土壌に変化するまでの間のすべての段階のものが含まれる現状にある。従って、有機物の分解程度の指標である炭素含量に基づいて整理すると、多くのことがみえてくると考えられる。この推測に基づき、手持ちの堆肥分析結果を整理する。

[成果の内容・特徴]
1. 酪農団体の牛ふん堆肥は、「家畜排せつ物法」施行前が2004年秋で23点、施行後が2005年秋のもので22点ある。豚52点、鶏15点の堆肥は、2001から3年間のものである。
  堆肥の腐熟を大枠でみると有機物の減少のことである。堆肥の全炭素は有機物含量の半分であり、表示例が多いだけでなく、特殊肥料の品質表示からも間接的に計算でき、これを指標に堆肥の腐熟に伴うその他成分の変化を整理すると規則性が把握できる。
2. 酪農の場合、炭素含量を指標にすると、「家畜排せつ物法」施行前では加里やリン酸含量に規則性が認められないが、施行後は規則性が認められる。実際、堆肥化開始時の全炭素45%で加里は2%、リン酸は1%としたときの濃度変化を示す図2の直線に合致するものがほとんどとなる。このことは降水による洗脱等が回避できる製造法に変更された施設が多いことを示すと推測でき、「家畜排せつ物法」の適正管理を裏付けると考えられる(図12)。
3. 養豚の場合は、炭素含量の低下に伴い重金属の増加が顕著に認められる。図の直線は密閉縦型発酵装置で生産される副資材無添加で濃度の高い製造方法の場合のものである。特殊肥料の銅と亜鉛の表示義務は現物中濃度である。この濃度と直線式と堆肥の水分から、表示義務を回避することのできる腐熟程度を計算することができる(図3)。
4. 炭素含量を基準に整理すると、いずれの家畜ふん堆肥でも腐熟を進めるほど無機成分と窒素との濃度差が拡大する。土壌の健全性維持や作物利用の面から無機成分施用量にも配慮した堆肥の活用が求められるので、腐熟を進めるほど施用量を減少させる必要があり窒素の肥効を期待しにくくなる。また、この濃度差の拡大程度の違いは、堆肥の利用性向上のための家畜飼料組成改善の資料ともなる(図24)。

[成果の活用面・留意点]
1. 堆肥の腐熟に伴う成分変化を予測できる。その結果は、腐熟のどの段階で利用すべきか、特殊肥料の重金属表示義務に対するリスク管理、堆肥利用性向上のための飼料組成改善、「家畜排せつ物法」の適正管理実施の有無の堆肥品質からの推測等に利用できる。
2. 堆肥の評価に炭素含量(有機物や灰分含量でも同じ)を指標とすることの可能性を示したものである。「家畜排せつ物法」への対応で堆肥の品質が変化していると考えられるので、現状把握やこの情報の応用に当たっては法律の完全施行以後のデ−タを積み上げる必要がある。


[具体的データ]

図1 牛ふん堆肥の全炭素と成分(16年度) 図2 牛ふん堆肥の全炭素と成分(17年度)
図3 豚ふん堆肥の全炭素と重金属 図4 鶏ふん堆肥の全炭素と成分

[その他]
研究課題名:堆肥の製造と利用の促進を支援する技術の開発
予算区分:県単
研究期間:2005〜2006年度
研究担当者:山田正幸、高橋朋子、鈴木睦美

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